『パンドラの果実』は観るたびに味わいが変わる ディーン・フジオカが向き合う科学の未来

『パンドラの果実』根強い人気の理由は?

 ディーン・フジオカ主演の新時代サイエンスミステリー『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』のBlu-ray-BOX&DVD-BOXが、1月11日に発売された。Huluにて放送されたSeason2を含む全16話は、732分にも及ぶボリューム。特典ディスクにはメイキングをはじめスペシャルな映像が収められ、作品の魅力を裏も表も余すことなく楽しめるボックスに仕上がった。

 本作は、日本テレビとHuluの共同制作によるドラマ。迫力の映像美と劇伴のこだわりは作品の世界観を唯一無二のものにし、土曜22時、視聴者に上質なエンターテインメントを提供した。

 ある事情から「科学の光」を信じたい警察官僚・小比類巻(ディーン・フジオカ)と、科学の「越えてはならない一線」を知り、自ら第一線を退いた天才科学者・最上(岸井ゆきの)、科学には疎いが検挙数はナンバーワン、人間的な視点で事件と向き合う刑事・長谷部(ユースケ・サンタマリア)の3人からなる「科学犯罪対策室」が、警察機構の対応が追いつかない、いわゆる“不思議で不可解な事件”の裏に隠された「科学そのもの」を解き明かしていく。明日、世界を変えるとも限らない「科学」の可能性、その光と闇を描き、命について、善悪について……答えの出ない問題を視聴者に投げかけ、我々の倫理観や人生観、死生観を揺さぶった。

 科学犯罪対策室が向き合う事件の動機や結末は、ときに悲しく、ときに重い。さまざまな角度から「人間」というものをありありと描いた作品であるゆえ、欲望や羨望、憎しみといった決して美しいとはいえない感情も描かれる。あるいは、痛いほどまっすぐな人間の本質も。しかし、小比類巻、最上、長谷部、そして強力な助っ人である厚生労働省のキャリア官僚・三枝(佐藤隆太)が織りなすポップなやりとりや、ときにぶつかり合い、ときに互いを気遣い、彼らがチームとなっていく過程もまた、本作の見どころだ。

 2022年4月期の本放送中、根強いファンの存在も印象的だった。割り切ることのできないテーマだからこそ、毎週の放送後にはSNS上にさまざまな意見が飛び交ったが、互いを否定することなく、新たな視点を分かり合おうとする視聴者の真摯な姿勢が見えたものだ。

 パッケージのリリースに伴い改めて本作を鑑賞してみると、放送当時とはまた違った感情が湧いてくることがある。例えば、死者の蘇りを描いた第3話(のちのストーリーに繋がる重要な回でもある)や、「死のVRゲーム」とその背景にあった“ある思い”を題材とした第4話、心霊現象を扱った第6話。本作は「事件」こそ解決するが、白黒つけることのできない、つける必要もない余白を残し、結論は観る者の想像力に委ねている。だからこそ観るたびに受け取り方は変わるし、抱く感情も異なる。放送時には悪一色に見えた人物も、より深く、改めて見つめることで捉え方が変わる。見落としていた繋がりにも気付いた。何度でも味わうことのできる作品であり、そこには、自分自身の経験や成熟が投影されるようにも感じた。

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