日本のヒーロー作品は世界に通用する? 『ヒロアカ』は実写化の法則を生み出す試金石に

『ヒロアカ』は実写化の法則を生み出す試金石

 米Netflixにて実写映画化される堀越耕平による日本の漫画作品『僕のヒーローアカデミア』(集英社、以下『ヒロアカ』)。監督・製作総指揮は佐藤信介、脚本はジョビー・ハロルドが担当し、日本では東宝が配給を行う。アニメ・映画から漫画まで幅広く詳しいドラマ評論家の成馬零一氏は、実写映画版『ヒロアカ』がどんな作品になりそうか、佐藤信介監督の起用から次のように語る。

「佐藤監督が手がけているNetflixシリーズ『今際の国のアリス』のアクションはすごく水準が高く、荒廃した東京などのビジュアル面でも見応えのある映像に仕上がっていました。過去には『GANTZ』、そして3作目の公開が決定している『キングダム』も映像化していて、アクションジャンルの実写化についてはノウハウを持っている第一人者だと思います。同じ日本のアクション監督で成功しているのが大友啓史監督ですが、『るろうに剣心』は明治を舞台にした時代劇なので、実写映画の表現に寄せることで成功しました。対して『ヒロアカ』は現代バトルものでヒーローがいる架空の日常を描いていくので、社会的な施設や風景の描写がSFに近くなってくる。過去作でもそういう描写に取り組まれていた佐藤監督の映像表現には期待が持てます」

 “米Netflixで実写映画化”というと、一般的に全スタッフが海外出身のクリエイターで制作されるイメージがあるが、今回は監督を日本のクリエイターが務める。その異色の組み合わせについて、成馬氏は「模索の時期に入っているのではないか」と語る。

「アメリカの制作チームが手がけたNetflixシリーズの『カウボーイビバップ』の実写ドラマは、シリーズ1作で打ち切りという残念な結果になっています。おそらく今は、模索の時期。これまで日本のテレビ局で『週刊少年ジャンプ』作品の実写化は難しかった。対して『金田一少年の事件簿』や『GTO』といった『週刊少年マガジン』の作品は、現実に根ざした世界観だったため、ドラマ化しやすかったのでヒットしました。ジャンプ漫画は現代を舞台にしていてもファンタジーテイストの作品が多く、アクションや頭脳バトル、クリーチャーが出てくるため、実写化する上でのハードルが高い。しかし近年は、Netflixなどの配信で大きい予算で自由に作れる機会が増えています。『NARUTO -ナルト-』、『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』などのアニメが世界でヒットし、配信を通して定着したからこそ、次の展開として実写化が模索されているのだと思います。どの作品が成功して定着していくのかはまだわからないので、期待半分、不安半分ですね」

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