『城塚翡翠』は役者のためのドラマ? 清原果耶の“20代の代表作”に続編を期待

清原果耶主演『城塚翡翠』続編への期待

 この二重性がうまく成功したのは、清原の清純派若手女優としてのイメージをうまく活用しているからだろう。翡翠の「演じているキャラ」と「本人」のギャップを用いて、視聴者を見事に欺いたのが、前作の『霊媒探偵・城塚翡翠』だった。

 『城塚翡翠』は二部構成となっており、初めに放送された『霊媒探偵・城塚翡翠』は、推理作家の香月史郎(瀬戸康史)を主人公とした「透明な悪魔」と呼ばれる連続殺人犯を追う物語として始まった。

 翡翠は霊視のできるお嬢様として登場し、殺された人間の霊を身体に憑依させることで事件の様子を語らせ、その証言を元に香月が事件を解決するという、1話完結のミステリードラマだった。しかし、「透明な悪魔」の正体は香月本人で、翡翠はインチキ霊媒師のフリをすることで香月の尻尾をつかもうとしていたことが、最終話で明らかになる。

 当初、本作は二部構成だと発表されておらず、第4話まではバディもののミステリードラマとして進み、第5話で最終回だと突然、告知された。つまり『霊媒探偵~』というタイトル自体が視聴者をミスリードするトリックだったのだ。放送途中でタイトルが変わり、新しいドラマとして始まる試みには心底驚かされた。この仕掛けは、清原の女優としてのイメージを逆手にとった見事なトリックだと言える。その意味でも城塚翡翠は、彼女の新たな可能性を引き出すハマり役だ。

 本作で清原は、清楚でかわいい世間知らずのお嬢様として振る舞うが、実は頭脳明晰で毒舌の名探偵という二重の演技をおこなっている。翡翠と犯人の対決は、秘密を暴こうとする嘘つきと秘密を守ろうとする嘘つきの探り合いで、その姿は、架空の人間を演じる俳優たちの姿と合わせ鏡となっている。つまり本作は、役者のためのドラマである。

 “演技をしている人間の演技”は難しく、完全に演じきったら嘘だとわからない。だから「演技をしている」という状態が伝わるように演じなくてはならない。翡翠のかわいい演技はわざとらしいものとなっており、服装も過剰で悪目立ちしている。その意味で、彼女が思うほど「かわいい女の子」を演じきれていないのだが、そのピントのズレ方が、別のかわいさを生んでいるのが面白い。

 翡翠は犯人とのやりとりを楽しんでおり、その振る舞いは小悪魔的と言える。だが、彼女の台詞の節々には、犯罪に対する強い怒りがにじみ出ている。どうやら彼女には何か目的があるようで、だからこそ、命の危険を顧みずに探偵を続けているようだ。物語は今回で最終回となるが、翡翠自身の謎はまだまだ残りそうである。

 清原にとって『城塚翡翠』が20代の代表作となることは間違いないだろう。続編を期待したい。

■放送情報
『invert 城塚翡翠 倒叙集』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:清原果耶、小芝風花、田中道子、須賀健太、及川光博
原作:相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』『invert II 覗き窓の死角』(講談社)
脚本:佐藤友治
脚本協力:相沢沙呼
演出:南雲聖一、菅原伸太郎、伊藤彰記
チーフプロデューサー:田中宏史、石尾純
統轄プロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:古林茉莉、柳内久仁子(AX-ON)
協力プロデューサー:藤村直人
音楽:Justin Frieden
主題歌:「妖」福山雅治(アミューズ/ユニバーサルJ)
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hisui/

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