尾上松也、後鳥羽上皇は見事なはまり役に 『鎌倉殿の13人』ラスボスとしてみせた人間味
いよいよ最終回を迎える『鎌倉殿の13人』(NHK総合)。鎌倉幕府最大の危機といえる承久の乱を仕掛けた後鳥羽上皇(尾上松也)は、朝廷側の勝利を当然と考えている。東国の武士たちに「北条義時(小栗旬)を討て!」と自分が言えば戦いはすぐに終わり、義時を排除できるものと思い込み、京都守護を襲撃させた。このとき、京都守護にいた義時の妻・のえ(菊地凛子)の兄が命を落とし、その衝撃はのえの心にも影を落としている。
尾上松也演じる後鳥羽上皇は、この物語の主人公・義時にとって最後の、そして最強の壁として立ちはだかる、まさにラスボス的な存在だ。高倉天皇の第4皇子として生まれ、異母兄の安徳天皇が壇ノ浦の戦いで平家とともに都落ちしたため、三種の神器の草薙の剣がないまま即位。源頼朝(大泉洋)が大天狗こと後白河法皇(西田敏行)に夢(?)でうなされていたけれど、義時は後白河法皇の孫である後鳥羽上皇に命を狙われることになった。
史実でも文武両道といわれる後鳥羽上皇。琵琶など楽器を弾きこなし、歌人としても一流。馬術など武芸はもちろん蹴鞠も得意で、トキューサこと北条時房(瀬戸康史)との名勝負のシーンは印象的だった。尾上自身、フットサルが得意とはいえ、衣装にしても頭に冠った烏帽子にしても動きがとりにくいうえ、所作にも制限がある。にもかかわらず軽やかな足さばきは見事としか言いようがない。
見事な蹴鞠といえば、尾上松也は2017年に放送されたNHK大河ドラマ『おんな 城主直虎』で今川氏真を演じたときも、蹴鞠の場面で強い印象を残している。雅で上品ではあるが、したたかな野心も隠し持って生きる氏真と、自信満々で負けず嫌いな後鳥羽上皇。優雅なだけでなく、その場をコントロールしたいという強い負けん気と集中力を持つキャラクターを演じる尾上は、生き生きとした輝きを放つようだ。
もちろん、戦国時代の武将である今川氏真と鎌倉時代に絶大なパワーを持ち、影響力を発揮していた後鳥羽上皇とでは纏う雰囲気も全く違った。ただ共通する点について考えてみると、その人物が持つ優雅さと負けん気という相反する性質を個性として尾上は巧みに表現していることが分かる。