『ストレンジ・ワールド』は“多様性”を丁寧に紐解く ディズニーが込めたメッセージとは?

『ストレンジ・ワールド』が紐解く“多様性”

 複数の男性キャラクターがメインで立ち回るディズニー作品は『ライオン・キング』(1994年)や『トレジャー・プラネット』(2002年)、『ブラザー・ベア』(2003年)などがあるが、子が父に憧れを抱くような家族愛をテーマに描かれることが多かった。一方、『スター・ウォーズ』シリーズなどでも見られるように、父と息子の関係性は対立を生む構図も多い。今作はそのどちらでもなく、イェーガーとサーチャーは対立し互いを認め合えない親子として物語が始まりはするが、新たな価値観を持つイーサンの登場で互いに言葉を交わし認め合うことができるようになった。多様性を認め合うことが重要だとする昨今の社会の流れを経て、「家族でも同じ価値観を持っているわけではない」ことや「違う価値観を持った家族だからこそより深く相手を尊重し愛することができるはず」というメッセージが込められていることが分かる。

 今作にはヒーローやプリンセスのように分かりやすいキャラクターは登場しない。しかし、現実を生きる私たちとよく似たキャラクターが登場し、相手を尊重し共に生きていくことの大切さを分かりやすく描いている。人種やセクシュアルアイデンティティ、価値観の異なる世代との向き合い方など、「多様性」という言葉でひとまとめにされがちなことを本作では1つずつ紐解いていく。政治的で教育的な内容だが、ディズニーが描くからこそ大人にも子どもにも分かりやすい仕上がりになっているのだ。本作を観れば、「そもそも多様性とはなんなのか?」「異なる価値観を持つ相手とどう向き合えばいいのか?」という疑問に答えてくれるだろう。

■公開情報
『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』
全国公開中
監督:ドン・ホール、クイ・グエン
製作:ロイ・コンリ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2022 Disney. All Rights Reserved.
公式サイト:Disney.jp/StrangeWorld

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