『PICU』涙ながらに訴える吉沢亮 1分1秒を争う戦場のような緊張感に息を呑む

『PICU』涙ながらに訴える吉沢亮

「この時点で私たちができることはあったでしょうか」

 事あるごとにPICU科長の植野元(安田顕)がスタッフに問いかける姿が印象的だった、10月10日に放送された『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)第1話。集中治療を必要とする15歳までの小児患者を対象に専門的に治療を行う“子どものためのICU”が北海道で新設されるも、スタートは“ないもの”尽くし。まず、スタッフは植野を含めた4名のみで、他の病院への応援を要請しても、スタッフ募集をかけても反応が得られない完全なる人手不足。そんなある意味少数精鋭部隊の一員として、よりによって選ばれたのが主人公で初期研修を終えたばかりの小児科医・志子田武四郎(吉沢亮)だ。

  “しこちゃん先生”こと志子田が小児科医になったきっかけは、元々希望していたのではなく、科にもこだわりがない中たまたま家の近所の丘珠病院で小児科医の募集があったからだった。「生きるとか死ぬとか無理だからさ。ホントそういうのダメだからさ」「子どもとか死んじゃったらマジでヤバイじゃん」と、とにかく“死の匂い”を極力遠ざけようとする節が彼には見受けられ、どうも真正面から“人の死”に向き合うのを避けているようだ。騒がしいのも自身のペースを乱されるのも好まないのか、バスの中でも帰り道もすぐさまイヤホンをして外界の騒音をシャットアウトする。悪い奴ではないのは間違いないが、どうにも志子田には何事にも深入りしまいとする頑なさと、それゆえの少しの軽薄さが滲んでいた。初対面で植野が言っていた「耳障りの良い名前」というのは志子田の人物像にも通ずる。患者に対しても当たり障りのないことしか言わず、どこか流れ作業的でもあった。ただ、彼がやけに死臭を避けようとするのにはもしかすると父親の死が関わっているのかもしれない。

 そんな志子田が「いつ何時もどんな子どもでも受け入れなければならない」救急救命の現場に放り込まれたのだ。女児患者が運び込まれてからの“PICU”はまさに1分1秒を争う戦場のようだった。関係各所に都度状況を確認し、それぞれの科の専門医らとのスピーディーな情報共有、連携が求められるチーム戦。慌ただしく人が出入りし、心電計の音がけたたましく鳴り響く。急患ゆえに手術室を用意できない場合もあり、その間に症状も相当進行していく。患者に施せる選択肢にはかなりの限りがあり、ここでも“ないもの”尽くしだ。その切羽詰まった緊張感のある様子に画面越しに思わず息を呑んでしまう。

 初めての“PICU”患者の救命は叶わず、その後すぐにミーティングを始める植野の様子に初めて志子田が感情的になり「さっきまで生きてたんですよ。人が1人死んでしまってるんですよ」と涙ながらに訴える。死に際に女児が彼の袖を掴んだ体温の生温さがまだ彼にまとわりついているかのような生々しさがあり、彼自身の脈がドクドクと波打っているのが伝わってくるかのような佇まいに釘付けになった。そんな志子田の訴えに対して、植野はこう答える。「亡くなったから話すんです。人間が一人死んでしまったから、まだ皆の記憶が新しいうちに正しい情報が集められる今のうちに考えるんです。どうしたら助かったのか、次に同じことが起きたら確実に助けられるように、僕たちは経験を自分の血と肉にするために話すんです。分析するんです」。植野の答えこそが、“医師として”人の死を無駄にせず真摯に向き合うということなのだろう。

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