『鎌倉殿の13人』全ての分岐点となっていた八重の死 反復される物語と台詞を読み解く

 続いて第21回と第33回において義時と談笑し、15年の年月を経た義時の「顔」の変化を指摘する運慶についてである。第33回時点で「己の生き方に迷いがある」「悪い顔だがいい顔」と評されていた義時は、第38回終盤において、黒の衣服に身を包み、唯一の救いであったはずの一切の「迷い」を捨て去った顔をしていた。まるで、自身の「望み」であるところの、かつての自分を見ているような泰時に、それまで抱いていた自身の「迷い」の部分を全て委ねてしまったかのようだった。

第21回八重の死を知る前の義時

 そして彼が新たに二重にも三重にも背負うことになったのは、兄・宗時の言葉に加え、時政、そしてりくが、それぞれのタイミングで口にした「てっぺんに立つ」という思いだった。そしてりく自ら口にして「あらやだ、こんな品のない言葉」と言わしめたその、あまりに直接的で単純な野望は、「板東の田舎侍」「伊豆の獣」と誹りを受けることもある彼らの本質であるとも言える。

 そんな「田舎者」がこれから対峙していくことになるのだろう、これまで優雅に様々な遊びに興じながら、鎌倉の動向を高みから「観戦」しているようだった後鳥羽上皇(尾上松也)。第38回終盤において彼は、自身のテリトリーを、思わぬ輩に侵されたことに対する怒りで震えていた。いよいよ、政子を不動の中心として、政のリーダーが時政から義時、「執権の妻」ポジションがりくからのえ(菊地凛子)へと引き継がれた、新しい北条家及び「鎌倉」VS後鳥羽上皇の闘いの火蓋が切って落とされようとしている。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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