錦鯉が教えてくれた“ライフ・イズ・ビューティフル!” 愛に満ちた『泳げ!ニシキゴイ』
また、2人の人生が交差することにより、「反復」が“クロス”するところも見事だった。第10話、中学生の隆(鈴木福)が宿題の「座右の銘」に悩むくだりで、姉の玲子(箭内夢菜)が「ヒット曲のタイトルでもいいんじゃない?」と勧めてきたシングルCDの中に「ラブ・ストーリーは突然に」があった。第41話、婚姻届のように2人で書いたM-1のエントリー用紙を前に、雅紀が「記念に歌います!」と「ラブ・ストーリーは突然に」を歌い出す。隆は「選曲どうなってんだよ」とツッコむ。キャラ作りに悩んでいた第38話では、隆の父・政夫(光石研)が息子の幼少期を懐しみ「ちんちくりんの子供のくせに大人びたこと言って」と雅紀に言ったのをヒントに、その逆で「大人っぽい服を着てバカなことを言う」可笑しみに隆が気づく。そして雅紀のあの「白スーツ」にたどり着く。
2人の人生に関わる「錦鯉を作った人たち」の言葉も熱い。雅紀が子どもの頃から絶えず「笑顔」の大切さを説き、励まし続けた母・幸子(坂井真紀)。第24話で幽霊となって現れた隆の母・美樹子(ヒコロヒー)がくれた「人と比べるな」「あんたが『これが面白い』って思えるお笑いができたらいい」との言葉は隆の支柱となる。第34話、2人のキューピッドになってくれた風祭先輩(風間俊介)が発した「夢見ることができるなら、それは実現できる」という、“中の人”のフィールドワークを活かしたウォルト・ディズニーの名言(風間は芸能界随一のディズニー通として知られる)。第36話で漫才のスタイルが定まらず悩む隆に「もっと(雅紀の)バカを生かしたネタをやればいい」と提言したハリウッドザコシショウ(演:本人)。50歳と43歳でブレイクスルーを掴むまで、長年くすぶりながらも、周囲の皆に愛され、見守られてきた雅紀と隆。M-1優勝のときの、様々な人の涙が思い出される。
錦鯉の真骨頂といえば、雅紀の「真っ直ぐなバカ」と、それを存分に引き出す隆のネタ作りだ。普段の2人の会話が元ネタになっている。もっと言えば、2人の生き様、人生がそのまま現れたネタだ。だからこそ人の心を打つ。人は何歳になったって挑戦できる。腐らずに続けていれば、人生は素晴らしい。やりたいことを続けられることは、もちろん苦しさも伴うけれど、幸せなことなのだと、錦鯉とこのドラマは教えてくれた。「ライフ・イズ・ビューティフル!」のオチでなぜか泣きそうになったのは、2人が体現する「人生讃歌」に心を掴まれたからだったと、このドラマを観終えてわかった。
■放送情報
『泳げ!ニシキゴイ』
出演:森本慎太郎(SixTONES)、渡辺大知、羽村仁成(ジャニーズJr.)、鈴木福、森島律斗、桑名愛斗、光石研、ヒコロヒー、箭内夢菜、伊武雅刀、坂井真紀、シソンヌじろう、片山友希、安齋肇
脚本:今井太郎、吉田靖直
演出:水野格、長沼誠
チーフプロデューサー:石尾純、齊山嘉伸
プロデューサー:河野英裕、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)、長田宙
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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