“第七世代”も後に続く? バカリズム、シソンヌら芸人脚本家が切り開いたドラマの新たな道
日本テレビ「シンドラ」枠で放送されている『でっけぇ風呂場で待ってます』は、Kis-My-Ft2の北山宏光とSexyZoneの佐藤勝利をダブル主演にした正統派なシットコム作品だ。毎回同じシチュエーションのなかでさまざまなトラブルが発生し、それを登場人物のコミカルな掛け合いによって笑いに昇華していく「シットコム」というスタイルは、アメリカでは90年代ごろに一大ブームを巻き起こし、日本でもその後頻繁に制作されてきた。とはいえ、いずれも深夜ドラマとして放送されており、やはりどこか一般的なドラマとは異なる線上にあるものと捉えられているようだ。
この『でっけぇ風呂場〜』では、主人公2人が切り盛りする老舗銭湯が物語の舞台となる。銭湯といえば概ね番台が見える脱衣所と、浴槽と洗い場がある浴場“でっけぇ風呂場”に区切られており、ドラマ内ではこの2者が手前と奥に配置された画面構図が常に維持されることで、より“コント”らしさのあるシチュエーションが生み出されている。さながら吉本新喜劇のような空気感の中に、ジャニーズのデビュー組である北山と佐藤が放り込まれているというだけでもなかなかユニークなものではあるが、やはり笑いの根幹となるのはその限定されたシチュエーションを活かすように器用に仕組まれた脚本といえよう。
本作で脚本を務めているのは、4人の芸人たち。第1話ではすでに“芸人脚本家”としての確固たる地位を築き上げているシソンヌのじろうが担当。2月1日に放送される第2話では昨年夏にHuluで配信された『恋、ランドリー。』でドラマ脚本家デビューを飾ったかが屋の賀屋壮也が、その後のエピソードではドラマ脚本に初挑戦するハナコの秋山寛貴、空気階段の水川かたまりが待機。シソンヌとハナコは「キングオブコント」の優勝者で、残る2組もファイナリストに進出した経験がある。いわば当代の優れたコント師が、シットコムに舞台を移してその技量を発揮していくというわけだ。
そもそも芸人という職業も脚本家という職業も、根本では決して遠い間柄ではない。遡ってみれば、映画監督として世界的に認められるビートたけししかり、劇作家の小林賢太郎、小説家では劇団ひとりや又吉直樹がすぐ思い浮かぶように、言葉や動き、あらゆる計算の末にひとつの“物語”を構築する作業という点では極めて近しいものと見ることができる。とりわけ『でっけぇ風呂場〜』の脚本家陣がやっているコントというジャンルは、設定=シチュエーションが重要であり、いかにして面白いシチュエーションの中で、いかにして面白い掛け合いを創るか、という部分に関していえば完全にシットコムというジャンルに符合するといってもいいだろう。