『ちむどんどん』暢子と重子、どちらに共感? 朝ドラの“姑”の描き方に感じる時代の変化

朝ドラの姑の描き方に感じる時代の変化

 思えば、姑の嫁いびりがエンターテインメントとして消費されたのは、観る側に余裕があったからではないだろうか。高度成長期、バブル期を過ぎたあたりまでは、日本が元気だったので、ネガティブな表現にも耐性があったのだろう。それに、日常、嫁いびりは実際にあるとして、ドラマでは、いびるほうが悪人視される。だから観ていて溜飲が下がる。日常では姑を悪とは明言できないが、ドラマのなかで意地悪されても健気に立ち上がるヒロインに、視聴者は自分を投影し、自己肯定感を高めることができたのだ。

 だが、時代は変わった。日本が貧しくなり、日常生活がしんど過ぎるため、身につまされるドラマは好まれなくなった。嫁いびりなんて観るに耐えない。そのうえ、朝ドラを昭和から視聴している層は、嫁世代から姑世代とシフトした。「ヒロイン=自分」だったのが、「ヒロイン=嫁」になった。そうすると、ヒロインの若気の至りが気に障ってならないのだ。筆者も年齢的には小姑から姑層になってきて、黒島結菜より鈴木保奈美に感情移入してしまうのだ。おそらく、そういう視聴者が多いのではないだろうか。第16週、それに気づいて目からウロコの思いがした。こういう層がいる一方で、黒島結菜世代の視聴者は圧倒的に暢子を支持しているかもしれない。

 視聴者の年齢があがって姑世代になってきたこと。新たな若い世代の視聴者も現れてきたこと。時代がしんどいものを好まなくなったこと。これらによって、朝ドラにおける嫁と姑の描き方が変わってきた。いまや、姑にも事情があることが描かれるようになったのだ。

 重子と暢子の関係性のみならず、第16週では、良子(川口春奈)の夫・博夫(山田裕貴)の祖母・ウシ(吉田妙子)が登場。良子の言い分(結婚しても仕事をしたい)を認めるように、博夫が祖父・小太郎(小林勝也)に詰め寄る。これも旧来の朝ドラであれば、ウシに厳しくされて良子がつらい思いをするところだろう。それがそうではなく、女達は連帯して夫たちに物申すのである。

 姑だって昔は嫁であり、嫁もやがて姑になる。年齢や環境や立場によって、生き方も見え方も変わるのだ。変わらないのは、この世に生きる者はみな、「同じ世界に住んでる」ということ。それを踏まえて朝ドラはアップデートをはじめている。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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