『金田一』らしさが絶妙 「オペラ座館 ファントムの殺人」は“5代目”屈指の好エピソードに

最終EP前編『金田一』らしさ保つ

 6月26日に放送された『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系/以下『金田一』)第9話は「File07 オペラ座館 ファントムの殺人」。この事件の前後編で、“5代目”のドラマシリーズが終幕を迎えるというわけだ。“初代”の幕開けとなった「学園七不思議殺人事件」のリメイクで始まり、『金田一少年の事件簿R』の事件や短編エピソードのドラマ化、「金田一少年の殺人」などの名作リメイクを経て、“オペラ座館”で幕を下ろす。もちろん他にも映像化してほしい事件はたくさん残ってはいるが、シリーズの流れとしてはこれ以上ふさわしいものはないだろう。

 何よりも“オペラ座館”は『金田一』を『金田一』たらしめる代名詞である。ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』の物語を下敷きにし、孤島(今回のドラマ化では“陸の孤島”のようだが)にある曰く付きの洋館というシンボリックな空間で起こる連続殺人と、愛憎うずまく犯罪動機を引き出す。原作漫画では最初の事件として「オペラ座館殺人事件」が描かれ、“初代”第1シリーズの第3話でドラマ化。その後ノベライズで発表された「オペラ座館・新たなる殺人」は劇場版アニメの第1弾として映像化。そして今回“5代目”で描かれるのは「オペラ座館・第三の殺人」である。

 剣持(沢村一樹)に誘われ、「劇団 遊民蜂起」の公演「オペラ座の怪人」を観にオペラ座館へとやってきた一(道枝駿佑)、美雪(上白石萌歌)、佐木(岩崎大昇)。しかし公演前日のリハーサルの見学をしていた一たちの目の前で、200kgのシャンデリアが落下。劇団員の一人が命を落としてしまう。オペラ座館にいる全員が集まった場所で起きた惨劇に、雑誌記者の白神(戸塚純貴)は“ファントム”の仕業だといい始める。そんななか、手掛かりを探りに離れの塔へ向かう一たち。しかしそこで単独行動をとった剣持は、翌日になってもオペラ座館に戻ってこず……。

 2話完結でじっくりと描くだけの余裕が残されていることもあって、作り込みはこれまで以上に贅沢に映る。まず原作から大幅な登場人物のカットはみられず(オペラ座館のオーナーである響静歌の娘・美土里だけがドラマ版に登場しないが、それでも金田一側に佐木が同行することで登場人物数は原作と変わらない)、かつ序盤から窓の外に見える塔の蝋燭が消えるシーンやシャンデリアの落下、ファントムの部屋に劇場の床下に広がる地下空間など、視覚的なインパクトにも事欠かない。登場人物の多さで陥りかねないキャラクターの混同を回避するための絶妙なキャスティングも相まって、これは“5代目”のなかでも屈指の好エピソードとなることを予感させてくれる。

 原作とは異なり“第三の殺人”が起きる前に一が地下空間を発見するくだりを入れ込み、解決編となる後編へと話が持ち越される。白神との推理合戦は後回しにされ、代わりに早い段階で一が“ファントム”の一連の行動に疑念を抱き始めるさまが加えられる。前後編としてのバランスがしっかりととられた今回の脚色は、視聴者の興味をそそることに注力した近年の連続ドラマの傾向をとらえつつも、これ見よがしにならない絶妙なラインで『金田一』らしさを保持している。

※岩崎大昇の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■放送情報
『金田一少年の事件簿』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:道枝駿佑(なにわ男子)、上白石萌歌、沢村一樹、岩崎大昇(美 少年/ジャニーズJr.)ほか
File07ゲスト:山本舞香、戸塚純貴、霧島れいか、古川雄大、コング桑田、七瀬公、増田昇、六角慎司、石川萌香
原作:天樹征丸、金成陽三郎
漫画:さとうふみや(講談社)
脚本:川邊優子、大石哲也
監督:木村ひさし、丸谷俊平
主題歌:なにわ男子「The Answer」(ジェイ・ストーム)
チーフプロデューサー:三上絵里子
プロデューサー:櫨山裕子、岩崎広樹、秋元孝之、大護彰子
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kindaichi2022/
公式Twitter:@kindaichi_5
公式Instagram:@kindaichi_5

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