『神は見返りを求める』は誰もが表現者の現代人必見 スマホという“凶器”を理解するために
YouTubeも映画も危険性は変わらない
スマホの凶器性を顧みないワナビーを大量に生み出したYouTubeは危険かもしれないが、それでもなお価値あるものだ。本作はYouTuberという存在を、決して嘲らない。映画や音楽のような既存の芸術や表現だけが素晴らしいわけではない、YouTuberだって確実に誰かに夢と希望を与えていることもまた描かれる。
特別な才能なんて何も持たないゆりちゃんでさえ、誰かに夢を与えられる存在になれたのは、YouTubeがあればこそだ。
映画を撮影するためのカメラだって使い方を間違えれば凶器になる。その点で、映画監督もYouTuberも変わりない。Webライターだって同様だ。本作はこの点において、大変にフェアな態度を貫いている。
では、ゆりちゃんや田母神のようにならないようにするにはどうすればいいのか。ペンであれ、スマホであれ、楽器であれ、表現するためには武器を手にせねばならない。その武器の怖さを知ること、表現行為の恐ろしさにも目を向けること。そのことを知っておかないと、いつの間にか人は「狂気」にのまれ、スマホを「凶器」として振り回すようになるだろう。本作は武器としてのスマホの怖さを知るための最良の教科書である。
※吉田恵輔の「吉」は「つちよし」が正式表記
■公開情報
『神は見返りを求める』
TOHOシネマズ 日比谷、渋谷シネクイントほかにて公開中
監督・脚本:吉田恵輔
出演:ムロツヨシ、岸井ゆきの、若葉竜也、吉村界人、淡梨、柳俊太郎
主題歌:空白ごっこ「サンクチュアリ」
挿入歌:空白ごっこ「かみさま」(ポニーキャニオン)
音楽:佐藤望
配給:パルコ
制作プロダクション:ダブ
(c)2022「神は見返りを求める」製作委員会
公式サイト:kami-mikaeri.com
公式Twitter:@kamimikaeri