『愛の不時着』『梨泰院クラス』の制作会社が日本進出 合作コンテンツで世界制覇目指す?

韓国「スタジオドラゴン」日本進出の背景とは

 『愛の不時着』などのスタジオドラゴン(CJ ENM傘下)と、『梨泰院クラス』などのSLL(旧JTBCスタジオ)が、揃って日本進出を表明している。昨今の日本における韓国ドラマブームを受けての動きかと思われるが、実際は世界におけるローカルコンテンツブームを後押しするために日韓で共同制作をしていこうという考えであることがわかる。

 5月12日、日本でLINEマンガなどを運営するLINEデジタルフロンティアは、韓国のCJ ENMとスタジオドラゴンと提携し、合弁会社「スタジオドラゴンジャパン(仮)」の設立を発表(※1)。CJ ENMとスタジオドラゴンの制作ノウハウを基盤に、LINEデジタルフロンティアが保有するオリジナルIPのドラマ化など、グローバル展開の加速を目的としている。この新規制作会社の設立理由には、日本における映像作品の制作が民放局を代表とした国内市場に向けたものであることに対し、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、ディズニープラス、Apple TV+など、グローバルOTTサービスがこぞって参入するローカルコンテンツの企画開発に市場開拓の余地を見出していることが挙げられている。

 また、昨今韓国で制作されている人気ドラマの多くが、ウェブトゥーンと呼ばれる縦スクロール形式のデジタルコミックを原作としていることも理由のひとつ。現在韓国TVINGでシーズン2が配信中の『ユミの細胞たち』(シーズン1はAmazonプライム・ビデオで配信中)、配信開始2年以上を過ぎてもNetflix ジャパンのランキングに入る『梨泰院クラス』、同じくNetflix配信で人気を集めた『わかっていても』、『ナビレラ』、『社内お見合い』、Netflixオリジナルの『地獄が呼んでいる』、『今、私たちの学校は…』『D.P. -脱走兵追跡官-』など、ウェブトゥーン原作ドラマは枚挙に暇がない。スタジオドラゴンジャパンが、LINEデジタルフロンティアがIP保有するウェブトゥーン作品のドラマ化を日本で行い、それらがグローバルOTTサービスで配信され人気を博すると、日本国内に潜在するマンガやウェブトゥーンIPを集めやすくなるという目算もあるのだろう。同様の動きは、2020年にLINEデジタルフロンティアの親会社になった米法人のLINE WEBTOON、Wattpad(ウェブ小説メディア)を通じてアメリカでも進められている。

 スタジオドラゴンジャパンを傘下に持つCJ ENMは、韓国随一のコンテンツ制作会社。先日閉幕した第75回カンヌ映画祭コンペティション部門に是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』、パク・チャヌク監督の『Decision to Leave(英題)』を出品し、それぞれ主演男優賞(ソン・ガンホ)と監督賞(パク・チャヌク)という快挙を成し遂げている。

 一方、『梨泰院クラス』、『夫婦の世界』、『SKYキャッスル』などの人気ドラマを多数手掛けてきたJTBCスタジオは、今年4月に「SLL(Studio LuluLala)」と社名を変更。LuluLala=ルルララは、擬音語で楽しい状態を示し、エンターテインメントによって世界の人々の幸せを願う社名だという。昨年はアメリカの制作会社Wiip(『メア・オブ・イーストタウン/ ある殺人事件の真実』などを製作)を買収し、ハリウッド進出も行っている。SLLの2022年はNetflixオリジナルの『今、私たちの学校は…』の快進撃で始まり、Netflixで世界配信された『私の解放日誌』、『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』がスマッシュヒット。映画では5月に韓国で公開された『犯罪都市2』(『エターナルズ』のマ・ドンソクと『解放日誌』のソン・ソックが主演)が、公開1カ月あまりで動員1000万人を記録、パンデミック以降初の大ヒット作となっている。今後も、6月24日にNetflixで配信開始となる、スペイン発の人気ドラマの韓国版リメイク『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』、映画では『悪魔を見た』(2010年)や『人狼』(2018年)のキム・ジウン監督の最新作で、カンヌ映画祭主演男優賞を受賞したばかりのソン・ガンホが主演する『Cobweb(英題)』などの話題作を控えている。

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