『インビジブル』は再生の物語だった 高橋一生が志村に宿らせた“人間臭さ”

高橋一生が志村に宿らせた“人間臭さ”

 刑事と犯罪コーディネーターの異色のバディが描かれた『インビジブル』(TBS系)がついに最終話を迎える。

 突然、犯罪コーディネーターの“インビジブル”を名乗る謎の女・キリコ(柴咲コウ)から手を組むことを提案された刑事・志村貴文(高橋一生)。毎話、凶悪犯罪者“クリミナルズ”との対決からかなりハードなアクションシーンの数々に挑む高橋一生の姿が見られた。しかも、ほとんど代役を立てずに撮影しているというから驚きだ。(※)

 常に決まったスーツ1着に身を包んだ軽装で、第2話で一瞬映った自宅も必要最低限のものしか置いていないミニマリストのような空間だったが、そんな志村は“必要以上に大切なもの”を持たないようにしているように見える。これにはきっと目の前で後輩・安野(平埜生成)を殺された3年前の通り魔事件が深く影を落としているのだろう。

 安野を守れなかった罪悪感や喪失感からか、自分のことには全く疎く、気怠そうでどこかやさぐれた志村の風貌からは自己犠牲が滲む。責任感が強いからこそ、そして実際には愛情深いからこそ、不用意に大切なものを抱え込みすぎないように周囲と距離をとりセーブしてきたのだろう志村の3年間が透けて見えるようで胸を突かれる。そして、意識的に身軽であろうとする志村ゆえに、向こう見ずに思えることもやってのける。さらに何なら志村は自分自身さえ信用できていない節も見受けられる。

 “熱血漢”でも“正義のヒーロー”でもない志村だが、あまりに理不尽に命を奪われた安野のことを思う時、何とか自分の中にある“正義感”に頼らなければ自身を正常に保てないしそこに立っていられないのだろう。時折足元をすくわれそうになりながらも“悪”には加担せずにどうにか踏みとどまる志村には、どうしようもないほどの“人間臭さ”が宿る。

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