『ちむどんどん』宮沢氷魚が戸次重幸から継いでいた沖縄への思い 和彦の凛々しき姿
『ちむどんどん』(NHK総合)第38話では、和彦(宮沢氷魚)が三郎(片岡鶴太郎)と言葉を交わす。和彦は「僕にとって沖縄はライフワークなんです。亡くなった父がやり残した仕事でもあるし」と話した。第37話で、戸次重幸が演じていた父・史彦が、東京に帰ってしばらくして病気で亡くなったことが明かされ、視聴者の間で悲しみの声が広がっていた。けれど和彦の言葉のおかげで、史彦の沖縄への思いが引き継がれていること、彼ら親子によって沖縄が語り継がれていくことが伝わり、安心感を覚える。
そんな和彦は、東洋新聞で果敢に行動する。東洋新聞きっての人気企画を書かせてほしいと頼み込む姿は凛々しい。和彦を演じている宮沢は、子ども時代を演じていた田中奏生を引き継ぎ、沖縄で暮らしていたときの「和彦くん」らしさが残っている。だからこそ、和彦が真剣な眼差しで田良島(山中崇)に熱意をぶつける姿には、彼の成長が感じられる。
そんな第38話では、田良島の存在が目を引いた。田良島は、和彦の熱意に耳を傾け、「そこまで言うならやってみろ」と挑戦する機会を与えた。それだけではない。新聞社で働き始めて半月が経った暢子(黒島結菜)には「新聞を読んで新聞を好きになろう大作戦」という、暢子が新聞記事に馴染めるような機会を与えていた。「料理の方が向いているかと」と言う暢子に、田良島は「料理も新聞記事も同じ」と話し、何かを作り出す上で一番大事なことを説く。
田良島は“一筋縄ではいかない皮肉屋”ではあるものの、和彦や暢子のような若者に目を配り、さまざまな社会体験に触れさせようとする。そして彼は、若者たちが一番重要なものに気づけず、それを取りこぼすようであれば愛をもって叱る。物語終盤、和彦はアレッサンドロ・タルテッリ(パンツェッタ・ジローラモ)から思い出の料理の核心を聞き出すことができなかった。
しかしこの企画で最も大事なのは「いつ、どこで、誰とそれを食べ、なぜ最後の晩餐にしたいのか」を聞き出すことである。田良島は和彦に「それを聞き出すのが俺たちの仕事だろ」と言った。演じている山中の眼差しは強く、理不尽に怒りをぶつけたり皮肉を言ったりはしていないものの、相応の圧が感じられた。それは田良島が、上司として伝えるべきことを新人の和彦に伝えていたからに他ならない。田良島は和彦に追加取材を命じた。この失敗体験が、和彦らを成長に導くことだろう。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK