『金田一少年の事件簿』道枝駿佑が挑んだ初ドラマ化エピソード ホラー色薄めた秀逸な脚色

 5月29日に放送された『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系/以下『金田一』)第5話は「トイレの花子さん」殺人事件。これは短編エピソードの「亡霊学校殺人事件」が原作となっており、“初代”まで遡っても短編からのドラマ化はこれが初めてとなる。また事件名がドラマ化にあたって変更されるのは第1シリーズ第6話「首無し村殺人事件」(原作では「飛騨からくり屋敷殺人事件」)以来。その時と同様、舞台設定の変更によって元のタイトルと合致しなくなったことが理由と見受けられるが、それがかえってインパクトの強いものになったのは好材料だ。

 佐木(岩崎大昇)の親戚がやっているという民宿に“卓球勝負”のために遊びにいくことになった一(道枝駿佑)と美雪(上白石萌歌)。そこで出会ったのは芸術大学の学生たちで、ひょんなことから彼らの恒例行事である肝試しに誘われることに。“花子さん”という女の子の霊が出るという民宿近くの廃病院に行き、1人ずつトイレの個室に置いたピンポン玉を回収していく。臆病な一も何とか肝試しを終えるのだが、最後に向かった伊能(中川大輔)だけが戻ってこない。そして翌日、“花子さん”の墓地の前で伊能の死体が発見されるのである。

 2時間スペシャルと2話続きのエピソード、そして1話完結のエピソードと、『金田一』シリーズでは通常3種類の脚色が施される。今回は1話完結であるわけだが、概ね一人しか死者が出ず、問題編と解答編に分けられタイトに進められる短編原作は、非常に1話完結と相性がいいことがよくわかる。いわゆる“連続殺人”を前に繰り広げられる探偵ミステリーよりも、一つの殺人をめぐる複合的なトリックを解き明かしていくことで、“謎解き”としての色合いが濃くなる。原作エピソードは1999年頃の連載だったと記憶しているが、現代のミステリーものの流行にかなり即したものといえよう。

 描かれるトリックのうちの一つ、ティッシュ箱のくじを使って順番を操作するというやり方。これは犯人である鳴沢(小野寺晃良)がグループ内における自分のポジションから「くじ引きを用意する」「その場にいる人の中で最後に引く」のが自分以外にあり得ないということを予期した上で実現できるトリックである。つまりは今回の“5代目”で美雪を演じている上白石が遊佐チエミ役で登場した、“4代目”シリーズの第1話「銀幕の殺人鬼」での“紙コップを取る順番”を使ったトリックにも通じるものがある。

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