『金田一少年の事件簿』道枝駿佑版でも見えた“伝統芸” ミスリード誘う視覚的な旨味も

 このエピソードではやはり黒マスク(原作では白頭巾であったが)の男の存在が圧倒的なインパクトを放つ。顔を覆い隠した人物の存在が、時にミスリードを誘うなど推理を難解なものにさせていくというのは、それこそ「異人館村殺人事件」の頃から頻繁に使われてきた定番中の定番だ。言わずもがなそこには『犬神家の一族』(角川文庫)の影響があるのだろう。とりわけこの「白蛇蔵殺人事件」においては、相続争いこそ起きないが跡目をめぐる争いが背景にありつつ、歴史ある家柄と3人の子供たちという点でそれと近しいものさえ感じてしまう。“真っ先に死ぬ”人物でありながら、その正体が誰であるかが終盤の展開をも左右する重要性を持つゆえ、その死をオープニング前にいきなり見せ、後半のドラマの比重を重めに仕上げたのは効果的だ。

 そのため省かれてしまったものとして、原作には登場した鏡花(りょう)の娘・蒼葉の存在があるが、登場人物の整理は致し方あるまい。“白く濁る水”や蛇のようにうねる水の動きなど、映像としての面白みが活きやすい描写を省いた点は少々勿体なくも思えるが、白蛇様の呪いや酒蔵というシチュエーションの特殊性よりも一族の因縁のドラマを優先させたと考えれば頷ける。それでも解決の糸口となる“フォースタンス理論”(=物の持ち方などの基本的な体の使い方は、4種類に分類されるという説)や“片づけすぎてしまう”くだりを丁寧に再現したこと、そして何より酒樽に浮かぶ死体や人体に火が燃え移るさまなどを躊躇なく見せる判断が、視覚的な旨味をしっかりと補っている。

■放送情報
『金田一少年の事件簿』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:道枝駿佑(なにわ男子)、上白石萌歌、沢村一樹、岩崎大昇(美 少年/ジャニーズJr.)ほか
※岩崎大昇の「崎」は「たつさき」が正式表記。
原作:天樹征丸、金成陽三郎
漫画:さとうふみや(講談社)
脚本:川邊優子、大石哲也
監督:木村ひさし、丸谷俊平
主題歌:なにわ男子「The Answer」(ジェイ・ストーム)
チーフプロデューサー:三上絵里子
プロデューサー:櫨山裕子、岩崎広樹、秋元孝之、大護彰子
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kindaichi2022/
公式Twitter:@kindaichi_5
公式Instagram:@kindaichi_5

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