頑張ってるのは自分だけ? 名作を生む秘訣を学ぶ『ハケンアニメ!』劇中作の神演出も必見

『ハケンアニメ!』名作を生む秘訣を学ぶ

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、SEとしてIT企業に務めたのち、今度は編集者として働くなど奇妙なキャリアを歩んでいる間瀬が『ハケンアニメ!』をプッシュします。

『ハケンアニメ!』

ハケンアニメ!
 あらゆるものづくりの現場では、熾烈な闘いが常に繰り広げられている。関わる人それぞれに考えや意図があって、同じチームといえど同じ方向を向けずにぶつかり合ってしまったりすることは、チームで働いたことのある誰しもに経験があるのでは。

 本作は、地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ斎藤瞳(吉岡里帆)が新人監督として覇権をとるアニメを作るために、制作現場で奮闘する様子を描く。しかしクセが強すぎるクリエイターたちや、宣伝のために各所に斎藤を連れ回すプロデューサー・行城理(柄本佑)らと全く分かり合えず、斎藤はいろんな人と衝突してしまう。

 物語が進むにつれ、斎藤はさまざまな登場人物たちと会話をし、人との関わり方を改善していく。アニメは自分一人では作れないので、これは監督として重要な成長であり、そして社会で働く私たちにとっても重要なものだと感じた。

 私たちがチームで何かものを作ろうとするとき、熱が入れば入るほど「頑張っているのは自分だけ」と思ってしまうのはよくある話。しかし関わる人それぞれに立場があり、それぞれの形で思いを込めて仕事をしている場合が多い。正義と正義のぶつかり合いからは何も生まれないのだということを、斎藤の成長を通して改めて学ぶことができる作品だった。

 また、本作に似た作品に、2014年に放送された、アニメ制作会社P.A WORKSのオリジナル作品『SHIROBAKO』がある。同じくアニメ制作を描いた作品で、これもまた各登場人物の内面がたいへん細かく描かれていて名作だ。本作と違ってプロデューサーとの関係はあまり描かれず、主に制作チーム内部の話が中心となっている。アニメ制作の話をアニメで描いているのが面白く、物語の展開をメタ的視点で楽しむことができる。

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