カンヌ国際映画祭の新たな取り組みと受賞傾向を振り返る TikTokとのコラボの意図は?

2022年カンヌ国際映画祭の新たな取り組み

「#TikTokShortFilm コンペティション」開催の狙いとは

 今年のカンヌ国際映画祭で注目すべき点は、やはりTikTokとのパートナーシップ、そして「#TikTokShortFilm コンペティション」の開催だ。これは、これまで映像製作をしたことがなかった人にとっても広く開かれたコンペティションとなるだろう。動画要件には「30秒以上3分以内であること」、「スクリーンフォーマットは9:16であること」などがあり、スマートフォンで作品を製作し、鑑賞することを前提としているのがわかる。同時に「脚本があり、MV、スタンダップビデオ、個人のVlog、リアリティビデオではないこと」などもあり、単なる動画ではなく、まさに新しい映画のかたちを模索する試みだ。スマートフォンや動画投稿・共有サービスの普及により、誰もが日常的に動画を撮影し、視聴するようになった。TikTokでも多くのクリエイターが活躍し、彼らの作品は若い世代を中心に新たな流行を生み出してもいる。世界最高峰の映画祭たるカンヌは、自らの権威を持って新たなクリエイターを励まし、ここから映画の作り手の裾野を広げようとしているのではないだろうか。

 カンヌとTikTokは「本企画を通じて、若手も経験豊富な映画クリエイターも、TikTokの幅広いクリエイティブツールやエフェクトを通じて映画制作技術を披露し、新たな方法で世界中の人々とストーリーを共有することを期待しています。」とし、コンペティションへの出品作品にTikTokの特徴でもあるエフェクトを用いることも推奨している。最新の技術とまだ見ぬ才能の融合が、映画文化をより発展させると考えているのだろう。同映画祭は、これまでも学生部門であるシネフォンダシオンや、「ある視点」部門などで若い才能の発掘・支援に力を入れてきた。今回の「#TikTokShortFilm コンペティション」も、その延長線上にある。

 世界的に最も注目度の高い映画祭であるカンヌは、近年最高賞のパルムドールにエンタメ性の高い作品が選ばれるようになったり、最新の流行を生み出すツールであるTikTokをオフィシャルパートナーに迎えたりと、驚くような変化を見せている。それは、世の中とともに映画文化も変化・発展していくと考えているからなのではないだろうか。こうして自ら変化していくことは、権威のあるカンヌがやるからこそ意味がある。新しい血を取り入れながら、カンヌ国際映画祭は今後も時代に合わせて発展しつづけていくだろう。

参考

https://www.festival-cannes.com/en/infos-communiques/communique/articles/the-films-of-the-official-selection-2022?year=2021
https://activity.tiktok.com/magic/eco/runtime/release/623c78b0d606b00332d2f799?appType=tiktok
https://deadline.com/2022/05/david-cronenberg-cannes-crimes-of-the-future-1235018996/

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