『劇場版シティーハンター』に願う“シティーハンターらしさ” 新作への期待と不安

 『シティーハンター』の熱烈なファンである筆者は、4月8日に発表された新作『劇場版シティーハンター』制作決定のニュースを聞いてから、期待と不安で心臓がドキドキしっぱなしだ。

 特に、原作者である北条司氏が「新作は前回とはひと味もふた味も違ったものになりそうです」と話していることもあり、最高と最悪のパターンを想像してしまう。

 では、何を期待し、何を危惧しているのか。新作製作発表から日が経った今、主人公・冴羽リョウに恋して久しい筆者が気持ちを言語化してみたいと思う。

『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』への感謝

 2019年、20年振りに『シティーハンター』が戻ってきた。初めて新宿の街で巨大なポスターを目にしたときの感動は忘れない。新宿という街が、まるでワントーン明るくなったかのように活気付いて見えた気がした。

 公開初日は、高鳴る胸をどうにか沈めながらTOHOシネマズ 新宿に向かった。音楽のチョイス、オリジナル声優たちの再集結、映画版とテレビスペシャルのお約束だった時事ネタ絡みの課題など、従来のファンを喜ばせるサービスがてんこ盛りだった。新宿を舞台にした戦闘シーンは、どれもこだわりと愛と細かな気遣いが感じられて文句のつけようがなかった。懐かしい展開に涙が止まらなかったし、製作陣には心の底から感謝した。

 だが、従来のファンだからこそ不満がなかったわけではない。

 まず最初に気になったのは、現代風アレンジがきいたキャラクターの設定画だった。筆者はリアルサウンドブックのコラム(冴羽リョウはなぜ最高なのか? 『今日からCITY HUNTER』が受け止めるファンの愛情)で「冴羽リョウの顔が好き」だと書いたが、それは2次元のキャラクターでありながらも、リアルな人間を思わせる顔をしているからだ。今回は少し目が大きく、幼さを感じさせるルックになっていた気がした。

 また、アウトラインが全体的に細くなったことで、なんとなく繊細な印象になった。アニメ版の『シティーハンター』はアウトラインが少し太く描かれていて、そこに「強さ」や「自立」を感られたものだった。『シティーハンター 3』と『シティーハンター '91』では作画全体が洗練されたが、それでも絵から「繊細さ」を感じることはなかった。

 昨今のアニメはアウトラインが細く、綺麗な絵が主流になってきているので、それに合わせたのかもしれない。だが、なんとなく『CH』らしくないなと思ってしまった。

 しかし、それはまだいい。納得できないのは、『キャッツ・アイ』の3姉妹をカメオ出演させたことだ。あそこでクロスオーバーさせる必要性はあったのだろうか。冴羽リョウというキャラクターが『キャッツ・アイ』の「ねずみ」こと神谷真人というキャラクターをモデルにしているのは有名な話だ。

 それに、海坊主と美樹が営んでいるカフェは、もともと『キャッツ・アイ』で3姉妹が経営していたものでもある。3姉妹がオーナーという設定もおかしな話ではないが、ここで関係性を明かし、香をヘリコプターに乗せてビル侵入の手伝いをさせるためだけに彼女たちを登場させる意味はあったのだろうか。

 『キャッツ・アイ』も『シティーハンター』も、単体で集客できるパワフルな作品だ。にもかかわらず、あえてカメオさせたことで、なんだか作品の力すら低く見積もられているような気持ちになってしまったのは否めない。両作の設定がクロスオーバーしているのは原作ファンなら知っている。だが、それは大々的には触れないのが楽しみのひとつだったのではなかったのか。

 とはいえ、「20年ぶりの冴羽リョウ」という事実が嬉しすぎて色んなことに目を瞑ってしまった。そして、筆者はただただ「『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』は最高」のリピートマシンと化してしまったのだ。

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