『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』に感じたMCUの光と影

『ドクター・ストレンジMoM』の光と影

 ただ、そんな作家性が前面に出ている作品だからこその欠点も存在する。特に筆者は、劇中のあるキャラクターの扱いについて強い憤りを感じた。今後も映画とドラマシリーズで並行して続いていくMCUの中でどうなるかはわからないが、これまで映画を観てそのキャラクターに生まれた愛情や思いが蔑ろにされたような気になってしまった。また、マルチバースに関する解釈も、映画とドラマシリーズで統一性が取れていないような印象も受けた。

 最初にこの作品を観たときは、モヤモヤするものを抱えながらも、これまでのMCUにはなかったような新しさに興奮を覚えたが、2回目の鑑賞時には、最初に観たときに感じたモヤモヤ度がより強くなってしまったのである。

 とはいえ、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)以来3年ぶりとなったIMAX 3Dでの映画体験はやはり格別なものがある。そして、今後重要な存在となっていくであろう新キャラクターのアメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス)の活躍や、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に続いてのサプライズなど、これからのMCUにさらなる可能性を感じた。マルチバース展開については少し食傷気味なので、新時代のMCUヒーローの誕生を描く『ミズ・マーベル』(6月8日よりディズニープラスで独占配信)、アベンジャーズ初期メンバーであるソーの活躍を描くシリーズ最新作『ソー:ラブ&サンダー』(7月8日劇場公開)を楽しみに待ちたい。

■公開情報
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
全国公開中
監督:サム・ライミ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、エリザベス・オルセン、ベネディクト・ウォン、レイチェル・マクアダムス、キウェテル・イジョフォー、ソーチー・ゴメス
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2022

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