『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』安室さんはなぜ強い? 警察学校組の死がもたらすもの
「忘れるこたぁねーよ……前にすすめるかはあんた次第。あんたが忘れちまったらあんたの親父は本当に死んじまうぜ」
これはかつて警察学校組の一人、松田刑事が同僚の佐藤刑事に向かって発したセリフですが、今回の劇場版の裏テーマともいえます。
警察学校時代から安室さんは優秀だったという描写がありますが、当時はあくまで同期たちとのチームプレーによって完全になっていた部分がありました。しかし、本作における安室さんの八面六臂の活躍は、彼が一人でも完全になってしまったことを感じさせます。亡くなった仲間たちを忘れず、困難にぶち当たった時、「こんな時、お前ならどうする?」と心の中で問い続けることで、安室さんは強くなっていったのでしょう。
今回の劇場版に限らず、『名探偵コナン』という作品には常に誰かの“不在”が付き纏います。そもそも江戸川コナンという少年は存在しないわけで、どれだけ少年探偵団と仲良くなろうと、恋人である蘭を待たせている以上、コナンはいつか工藤新一に戻らなければなりません。
そして、過去に放送された「命がけの復活」や「コナンがいない日」といったエピソードでは、それを示唆するかのようにコナンが不在の状況下でも活躍する少年探偵団の様子が描かれています。
同じように、コナンと安室さんの共通の敵である「黒の組織」が解体された暁には、潜入捜査のために作られた“安室透”というペルソナが消える日も必ずくるわけです。その時、安室さん、もとい降谷さんは、人目を憚らず仲間たちのお墓参りに行けるようになるのか。それとも、安室さんは殉職した松田刑事のように生き急いでしまうのか。
『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は、そんな『名探偵コナン』のこの先の展開を想像させてくれる一作でもありました。
■公開情報
劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』
全国東宝系にて公開中
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
キャスト:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹ほか
監督:満仲勧
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
配給:東宝
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
(c)2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:http://www.conan-movie.jp