クリストファー・ノーランにも貪欲にアピール 中島健人の“映画人”としての魅力

 Netflixの「今日の映画TOP10」に連日ランクインするNetflix映画『桜のような僕の恋人』で主演を務め、「セクシーサンキュー」という決め台詞と、“ケンティー”の愛称で幅広い世代から愛されるSexy Zoneの中島健人。

 常に王子様キャラを貫くスマートな立ち振る舞いと、ファンや共演者を気遣うサービス精神、それでいて目の前の仕事には真摯に向き合う性格は、まさに完璧なアイドルという言葉が似合う。ただ“ジャニーズ”という肩書きがファン以外からは色眼鏡で見られることが多いと思われるが、2020年の第92回アカデミー賞授賞式の現地リポートで彼への評価が一変する。もともと中島はそのトーク力から「頭の回転が早い」と言われていた。影の努力を惜しまないストイックさもファンの間では有名だったが、アカデミー賞の特番でも、単純に覚えてきた質問をぶつけるだけではなく、豊富な映画への知識と情熱で会話を成立させた。そこに流暢な英語と中島らしいノリの良さが重なって、映画ファンを驚かせたのだ。その流れから、2021年1月よりWOWOWで『中島健人の今、映画について知りたいコト。』が放送開始され、そのコミュニケーション能力が遺憾無く発揮される。

 クリストファー・ノーラン監督とのリモートインタビューでは、用意された原稿だけでなく、聞きたいことを聞く姿勢で、難解なノーラン作品を「時間」という観点で分かりやすく質問するなど、しっかりと作品を勉強し会話が成立していた。また、監督をリスペクトしつつ、フレンドリーに会話をしている様子は、例え相手が巨匠だろうと身近な存在と錯覚してしまうほど。彼らが普段のインタビューでは見せない言葉や表情を引き出すことができるのが、中島の特異なところである。

 『ノマドランド』の監督クロエ・ジャオとのインタビューでも、撮影中に寝泊まりしていたバンの名前が漫画『スラムダンク』に登場する仙道彰にちなんで「アキラ」と名付けられた、という話から漫画トークに繋げた。一番好きな漫画が『幽☆遊☆白書』ということで意気投合し、一気に打ち解けるといった中島の気さくさと気転の早さ。それは外国人相手に限らず発揮される。是枝裕和監督のインタビューでは、会うなりいきなり「寝室に是枝さんの記事を貼って、それを見て寝ている」と切り出し、それが「カトリーヌ・ドヌーヴについて語っている、スーツを着て時計つけてる写真の記事」と説明する。「一番恥ずかしいやつだそれ」と、気難しい印象の是枝監督とも一気に距離を縮めるやいなや、「韓国映画は日常をエンターテインメントに切り取るが、日本映画は日常を繊細に切り取るというイメージがある、その繊細なものを世界に広げる」といった自分の意見をしっかりとぶつけて話を引き出すところに、頼もしさを感じる。

 それでいて、自分を売り出そうという気概も感じられるところがおもしろい。ノーラン監督に「(僕があなたの)映画に出るとしたらどんな役が似合う?」と聞くと、「テレビのインタビュアー役なら間違いないね。今日は完璧にこなしている」とその姿勢と英語力に太鼓判を押される中島。すると、「では演技を見てくれ」と『ハムレット』の1シーンを演じてしまう。チャンスをものにしたいという度胸と貪欲さに、中島がスターである所以を感じる。

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