クリストファー・ノーランにも貪欲にアピール 中島健人の“映画人”としての魅力

 番組ではメモを取るシーンが数多く見られることからも、映画を学ぼうという意識が高く、映画に関する知識も28歳にして深い。アカデミー賞の魅力を語る回で、「印象的な受賞スピーチ」として中島が選んだのは、1990年の『グッドフェローズ』で助演男優賞を受賞したジョー・ペシのものだった。「光栄です ありがとう」という、その一言だけのスピーチを選んだり、他には1972年にチャールズ・チャップリンが名誉賞に選ばれた歴史的スピーチを選んだり。映画好きならこの受賞がどれだけ意義のあるものかは分かるが、中島が選ぶことで、若い世代にもその歴史を知ってもらうきっかけにもなった。この回では他にも、ホアキン・フェニックスが兄の話を出すなどの感動的なスピーチをしたシーンを見た後に、何がとは言わずに「いろんなものを抱えている人が報われる場所ですよね」と言い、「あれ(スピーチ)以降、本音を出してくれないかもしれない」とさらっとつぶやくところに、映画マニアの心がくすぐられる。

 今年の第94回アカデミー賞はウィル・スミスが何かと話題となったが、中島は生中継で「彼の行動は肯定しないけど、信念は信じたい」とコメント。後の自身の番組でも、ウィル・スミスの涙のスピーチについて誰を攻めるでもなく、それでいて肯定も否定もせずに、役者へのリスペクトを感じる言葉を残した。

 中島は俳優や監督だけに限らず、特殊メイクや音響などの裏方も番組を通して素晴らしさを伝える。そして彼の目線を通すと、映画そのものが希望に満ち溢れているように感じられる。

 その堪能な英語力でハリウッドに挑戦してほしいという気持ちもある。しかし、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞する快挙を成し遂げたことは、ハリウッドではなく日本でも、良作を作れば世界に伝わることを改めて証明した。是枝監督との対談でも「世界が納得するのは強さと深さ」と語られていたが、日本でしっかりと俳優を勤めれば世界に通じる可能性は十分にある。まずは目の前にある作品で名演技をすることが大事だ。

『桜のような僕の恋人』中島健人、英語インタビュー【日本語/字幕】-Netflix

 主演を務めた最新作『桜のような僕の恋人』は現在Netflixで全世界同時独占配信され、中島は英語で番宣もしている。「僕の28年の人生の最高傑作にしたいと強く思っています」と言った中島が見せる演技は、普段の明るさや活発性を抑えた“静”に注力したものであり、演技に対する意識が変わったようにも思う。中島の演技が日本だけでなく世界でどう受け止められるのか。中島の映画への愛と貪欲さは、役者としてのさらなる飛躍に繋がっていくだろう。

■配信情報
『桜のような僕の恋人』
Netflixにて全世界独占配信中
出演:中島健人、松本穂香、永山絢斗、桜井ユキ、柳俊太郎(「柳」は旧字体が正式表記)、若月佑美、要潤、眞島秀和、モロ師岡、及川光博
原作:宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社文庫刊)
監督:深川栄洋
脚本:吉田智子
主題歌:Mr.Children「永遠」(TOY’S FACTORY)
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix)
プロデューサー:春名慶(博報堂DYミュージック&ピクチャーズ)、川田尚広(TOHOスタジオ株式会社)
制作会社:TOHOスタジオ株式会社
企画・制作:Netflix
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/桜のような僕の恋人

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