『カムカムエヴリバディ』タイトルバックを最後に変更した理由 「家族がついにひとつに」

『カムカム』OP映像を最後に変更した理由

 NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が4月8日に最終回を迎えた。東日本大震災と向き合い、コロナ禍の現在のその後が描かれた前作の『おかえりモネ』と同様に、『カムカムエヴリバディ』の最後は2025年という現在から少し先の未来で幕を閉じた。

 週5日、毎日15分の放送が約半年間続くという独特の形態である朝ドラは、視聴者は登場人物たちと同じように長い時間を共有していく。自ずと、登場人物たちの親戚、知り合いになったような心持ちになりやすく、他のドラマ作品以上に感情移入しやすいと言える。その前提があった上でも言いたいのは、『カムカムエヴリバディ』は近年の作品の中でも、最も“自分ごと”として、物語の中の一員になったような感覚として、没入してしまう作品だったということだ。

 そんな本作において、毎話作品を彩っていたのがAIの主題歌「アルデバラン」ともに流れるタイトルバック。タイトルバックにはメインで登場する3名の女性がいる。本作の三世代ヒロインである安子(上白石萌音/森山良子)、るい(深津絵里)、ひなた(川栄李奈)を表した人物ではなかったそうだが、その姿に彼女たちの歩みを重ねていた視聴者も多かったことだろう。

 第1話から第110話までは3人が歩いている道が3つに分かれていたが、安子とるいが再会を果たす第111話は“スペシャルバージョン”としてある変更がされていた。3つに分かれていた道が1つにつながったのだ。

 このスペシャルバージョンはタイトル制作の竹内泰人と演出の深川貴志の発案で制作された。深川は、「『毎回オープニングをみてくださっている視聴者の皆さまに何か感謝の気持ちをあらわせないか』という話をしていました。その反面“このドラマの中心でもある『つながり』を見事に表現したオープニングは変えないべきでは?”という気持ちもあり考えあぐねていたところ、3月15日に高瀬耕造アナウンサーの『オープニングの中で3世代、3人が並んで歩いている場面があるんですよね』というような発言を耳にしました。それを受け、3人が歩く道に焦点を当て、仕掛けを作り上げることにしました」とその経緯を振り返る。

 安子が稔(松村北斗)と初デートで訪れた「Dippermouth Blues」を、るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)が最後は引き継いでいたり、安子の親友・きぬ(小野花梨)の孫・花菜(小野花梨)がるいの息子・桃太郎(青木柚)と結婚したり、全話を通してさまざまな“つながり”が『カムカムエヴリバディ』には散りばめられていた。振り返ってみると、安子と稔、安子とるい、錠一郎とトミー(早乙女太一)、ひなたと五十嵐(本郷奏多)など、たとえ同じ道を歩めなくなっても、その裏でずっとつながっている、歩んできた道がその人自身を形作っている、そんな本作のテーマをタイトルバックは見事に表現していた。それだけに、深川がオープニングを変えることに悩んだというのもうなずける。しかし、結果としてこの変更は間違いなく正解であったと言えるし、物語を追い続けてきた視聴者ほどこみ上げるものがあったのではないだろうか。

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