『カムカムエヴリバディ』描かれた大月家のその後 ひなたを支える虚無蔵の言葉と稔の辞書

『カムカム』大月家のその後が描かれる

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第99話では、来るべき時に備えてそれぞれの日々が描かれた。岡山から戻ったひなた(川栄李奈)たち。いつもの日常で変わったことと言えば、るい(深津絵里)が口にするあんこのおまじないと小学生以来のラジオ英会話。眠い目をこすりながら、ひなたはラジオに耳を傾ける。

 「小豆の声を聴け。時計に頼るな。目を離すな」というあんこのおまじないに、ひなたは聞き覚えがあった。第84話で2代目モモケン(尾上菊之助)から聞いたもので、モモケンは算太(濱田岳)から教わった。るいは安子(上白石萌音)と一緒にいるうちに覚えたのだろう。別々に伝わったあんこのおまじないが、時を経て、ふたたび一つになる様子は感慨深い。「おばあちゃんは誰から教わったんやろ」と疑問を抱くひなたに、「毎朝ちょっとずつ話したげるから」とるい。朝ドラやラジオ英会話のように、家族の歴史も語り継がれていく。

 あんことラジオ英会話。時を経ても変わらないものが、時代の変化を映し出すのが『カムカムエヴリバディ』の世界だ。錠一郎(オダギリジョー)がトランペットを吹けなくなったことが、つい昨日のように思い起こされる。それから約30年。トミーこと北沢富夫(早乙女太一)は日本を代表するトランペッターになり、小夜子(新川優愛)は吉之丞(徳永ゆうき)との間に子どもを授かり、清子(松原智恵子)はひ孫の誕生を見届けて逝去。桃太郎(青木柚)は岡山の大学に進学し、錠一郎も音楽活動を再開してピアニストになった。

 ピアニストへの転向を決意した錠一郎を、トミーは「センスは抜群やから、あとは練習しだいや」と太鼓判を押す。「僕がアメリカに連れて行くから」との錠一郎の言葉を聞いて、るいの眼から涙がこぼれる。錠一郎はあわててハンカチを渡そうとして、間違って台ふきんを差し出し、るいにツッコミを入れられる。息の合ったかけ合いに「相変わらず共鳴し合ってるな」とトミー。2人を身近で見て、あの海の中の抱擁を知るトミーならではの表現だった。

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