ジョー・ルッソ監督、マルチバースの概念に苦言? 「企業における創造性と革新性の欠如」

ジョー・ルッソ監督、マルチバースに苦言?

 トム・ホランドが主演を務める、現在公開中の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(以下、『ノー・ウェイ・ホーム』)では、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の実写版映画シリーズで初めてマルチバース(多次元世界)が開き、2022年5月に日本公開を控える『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でも、そのタイトルが物語るように、『ノー・ウェイ・ホーム』で起きたマルチバースの余波が中心に描かれる。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(c)2021 CTMG. (c)& TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

 『ノー・ウェイ・ホーム』ではマルチバースが開いたことにより、過去フランチャイズから懐かしのキャラクター多数が復帰するなど大きな話題となったが、そのマルチバースのトレンドについて、MCU映画4作で共同監督を務めたジョー・ルッソは思うところがあるようだ。

 2月22日~24日にわたって米ラスベガスで開催された「DICE Summit 2022」のパネルに登壇したルッソは、“マルチバースの概念”に対するハリウッドの執着ぶりについて、「企業における創造性と革新性の欠如」だと警告。“デザート”を例に次のように語っている。

「企業の実施計画というのは、『チョコレートアイスは好きですか? では、こちらにスプリンクルをまぶしたチョコレートアイスがありますし、こちらにはファッジをトッピングしたチョコレートアイスもありますよ』といったような感じなのです。お金の印刷機のスイッチを入れるのが彼らの仕事であり、クリエイターは、『クソだね。それを自分が観たいかどうか分からない』と言うのが仕事なのです」。ルッソは、流行りに乗じて一つのコンセプトにこだわったり、派生的なテーマを繰り返す企業やスタジオに対して、監督やクリエイターが“NO”と言う必要があると持論を展開している。

 続けてルッソは、「そういうわけで、一つのことをやり過ぎるのは良くありませんが、まだ業界にはサプライズを期待できるクリエイターも革新者も十分いると思っています。ですが、企業にサプライズを期待してはいけません」と忠告。クリエイター次第で、使い回しのアイデアでも斬新かつクリエイティブなものにできると意見していた。

 ジョー・ルッソと彼の兄であるアンソニー・ルッソは、『アベンジャーズ』シリーズの完結編『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)で世界興行収益記録を塗り替える空前の大ヒットを放ち、まさにMCUを知り尽くした古参クリエイターなだけに、コンセプトとしてマルチバースを再び取り上げたマーベル映画の方向性を危惧しているのかもしれない。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(c)Marvel Studios 2022

 ちなみに、MCUの実写版映画がマルチバースを取り上げるのは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で2度目となるが、すでにディズニープラスで配信されているマーベルアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』は、MCUで実際に起こった出来事をベースに数々の“もしもの物語”が描かれる、まさに“多次元世界”がテーマとなった作品。また、ディズニープラスのマーベルドラマ『ロキ』でもマルチバースが描かれている。

 なお、これまでにマーベルをはじめとする大作スーパーヒーロー映画については、マーティン・スコセッシが「マーベル映画はテーマパーク」だと発言し、その他にもジェームズ・キャメロンやリドリー・スコットといった巨匠たちが批判的な意見を述べている。今回、MCUの“内輪”であるジョー・ルッソからも警告と取れる言葉が飛び出したわけだが、将来的にMCUがどのように展開していくのか、今後の動向に注目していきたい。

参考

https://deadline.com/2021/11/ridley-scott-house-of-gucci-lady-gaga-adam-driver-the-last-duel-oscar-season-1234872529/
https://comicbook.com/marvel/news/marvel-movies-martin-scorsese-not-cinema-invaded-doubles-down/
https://screenrant.com/mcu-dceu-multiverse-stories-joe-russo-opinion/

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