『進撃の巨人』始祖ユミルの救世主となったエレン 二千年もの間待ち続けた解放の言葉
TVアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』の第80話「二千年前の君から」では、ユミル・フリッツの壮絶な過去が描かれた。過去に囚われ続けたユミルの救世主となったのは、エレン・イェーガーだった。
前回、エレンの持つ進撃の巨人の真の力が明らかとなり、エレンは自らの手によってグリシャ・イェーガーを導きその場にいたレイス家を殲滅させる。「エレンを止めてくれ……」と切実な思いをグリシャから託されたジーク・イェーガーは始祖ユミルに対し、全てのユミルの民から生殖能力を奪えと命ずるのだった。ジークの命令に従い動き出すユミル。鎖に両手を繋がれ身動きできずにいたエレンは、命令を阻止すべく鎖を引きちぎり、ユミルのもとへと駆け寄る。その姿は自由を求め、ただまっすぐ進み続けることしかできないエレンそのものだった。この鎖を引きちぎる際のエレン役・梶裕貴の魂のこもった叫びは、自由を求め進み続けるエレンの焦りや決意といった様々な感情が滲み出ていて、心を揺さぶられた。
第80話の主役はユミルだった。フリーダ・レイスによるとユミルは「いつも他の人を思いやってる優しい子」。ユミルの過去はあまりにも残酷で壮絶だ。奴隷として強制労働させられていたユミルだったが、ある時フリッツ王から豚を逃した者がいると疑いをかけられ、周りにいた奴隷たちは真っ先にユミルを指差す。そこで、フリッツ王から自由とは名ばかりの罰を与えられたユミルは、追手の追撃から逃げ惑い重傷を負うなかで、ある大樹へとたどり着く。そこで偶然にもユミルは大地の悪魔と呼ばれる有機物の起源に触れ、巨人化を果たすことになる。これが二千年前から現在まで続く“始祖ユミル”の歴史の始まりである。
巨人の力を有したユミルは依然としてフリッツ王の奴隷となり、エルディアの領土拡大を強制させられ、その褒美として妻になることを命ぜられる。しかし、ある時、謁見していた敵の奇襲からフリッツ王を守るため、ユミルは自らの身体を投げ出し身代わりになってしまう。本来であれば巨人の力で回復することができるはずだが、フリッツ王の冷酷無残な言葉を受けてユミルは死を選ぶのだった。ユミルが王に求めていた言葉は慈しみの言葉だったのではないか……。
死後もなお、ユミルには安らかな眠りを与えられない。フリッツ王はユミルの娘であるマリア、ローゼ、シーナにユミルを喰らうことを命令する。その目的はユミルの巨人の力を後世へと残すためだ。これこそ巨人が人を食べる習性へと繋がっている大事な描写である。シリーズの根幹を成す大事なシーンなだけに、アニメーションとして補完されたことで、このユミルの描写はより感情移入しやすくなっていたように思われる。