『未体験ゾーンの映画たち』 はコロナ禍にも屈しない? 担当者と振り返る10年の歩み

『未体験ゾーン』過去10年と上映作を回顧

 様々な理由から日本公開が見送られてしまう傑作・怪作映画を、映画ファンがスクリーンで体験できることをモットーに、2012年よりヒューマントラストシネマ渋谷が中心となって開催している劇場発信型映画祭「未体験ゾーンの映画たち」。初回の上映では、2021年に『王様のブランチ』(TBS系)で紹介され、各配信サイトのランキングに浮上するほど視聴者数が急増した名作、『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』をすでにピックアップしていた。振り返ってみると、後に映画ファンの間で話題となる作品を他にも多数取り扱っていることがわかる。そして今年10年目となる「未体験ゾーンの映画たち 2022」が現在開催中。そこで、ヒューマントラストシネマ渋谷の吉川敦夫支配人に、これまでの本企画の歩みをホラー映画シーンの変遷とともに語ってもらった。

「未体験ゾーンで上映する用に買い付けをしてくれる場合も」

――まず、本企画をはじめることになったきっかけを教えてください。

吉川敦夫(以下、吉川):「未体験ゾーンの映画たち」は、もともとビデオパッケージスルーされてしまう作品を「1週間でもいいから映画館で観たい」という主旨から始まっています。やはり映画館で1回でもかかっている映画と、レンタルにすぐ入ってしまう作品とでは知名度がかなり変わってくるので、短期間だけでも上映する価値はあると感じました。それを2012年から取り組んでいます。

――作品の選定において、ここ10年で何か変化はありましたか?

吉川:選定は昔も今もまったく変わっていないですね。配給さんから「これは本当に劇場で1回かけたい」とお願いされる何十本もの作品の中から、編成者が面白そうなものを選んでいます。ホラーやミステリーなど、ジャンルも分けていませんね。他のところでは時期的にもかけられないけれど、うちだと1週間はかけられるというのでお声がけいただけますし、今だと「未体験ゾーン」で上映する用に配給が買い付けをしてくれるところもありますね。

――ある意味ブランド化しているんですね。

吉川:そうですね、長くやってきた甲斐があるんだなぁと思います。

――10年間続けてきて、お客さんからの声はどうですか?

吉川:1人で観に来られる方が多いので、「ワイワイ」というよりかは毎日静かにアツい感じでお客さんが通って来られる印象です。今年は上映作27本と、かなり本数が少ないんですけど、去年や一昨年までは毎年徐々に増えて1回50本くらい上映していました。それを2〜3カ月かけて毎日観に行くのは本当に好きな方じゃないと難しいと思います。それでも毎年20〜30人はフルコンプしてくれるお客さんがいて。去年、一昨年のコロナ禍の時も上映時間が急に変わってもいらしてくれた。直接のお声がけはありませんが、編成が新しくなるごとにまた来ていただいているなって、そのお顔を見て嬉しくなります。

――それは劇場側にとって嬉しいことですね。やはりパンデミックはあらゆる映画館にとってここ数年の課題だと思いますが、それでも変わらず「未体験ゾーン」をやり続けていかがでしたか?

吉川:一言でいうと、非常にありがたかったですね。そういう状況になっているにもかかわらず、「これぐらい来てくださるだろう」という、「未体験ゾーン」の動員予想数があるのですが、これが落ちないんですよね。去年も一昨年も。そういった動員予想数は他の作品だとやはり落ちてしまっているけど、「未体験」は本当に一定数の方が来てくださる。編成に少し名の知れた監督の作品があれば話題作ということで、さらにもっと増えるのですが、その最低ラインがずっと減らずに動員数が保たれたところは非常にありがたかったですね。本当に、こういう状況でも良いお客さんが来てくれることがわかってとても嬉しかったです。

――パンデミックにかかわらず、この10年間の動員数と比べても落ちていないと。

吉川:落ちなかったですね。

――それは本当に素晴らしいことというか、いち映画ファンとしても胸が温かくなります。ちなみに普段からお客さんの入りが良い、人気が高い作品の特徴などはありますか?

吉川:安定して入るとなると、一番はやっぱり「ゾンビ」ですね。ゾンビ映画はどのような形でやっても、一定の人数の方たちが来てくださる。あとはやはり新しく出てきた監督の過去の作品は知名度があるので人気も高いです。

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