朝ドラにおける“太陽と月”、『カムカムエヴリバディ』はどう描く?

“太陽と月”から読み解く『カムカム』

 妄想癖があり、心の内を表に出すことが苦手だけれど、そっと人を思いやる優しさを持ち、いつも静かにいろんなことを考えていそうなるいは、「月」と言えまいか。母・安子との確執で負った傷を抱え、岡山ではずっと「日陰の道」を歩いてきたであろうるいが、その来し方により身につけたであろう「思慮深さ」。「暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聴こえぬ歌がある」という“モモケン”の決め台詞は、ジョーのみならず、るいの人生をも示唆しているように思える。

 そして、るいの娘・ひなた(川栄李奈)。番組公式サイトの人物紹介には、その人物設定が「挫折の繰り返し」「自分の居場所を見つけられない人生低空飛行な愛らしき女の子」とあり、どことなく『ちりとてちん』のビーコを彷彿とさせる。もしかすると「ひなた編」は、ひなたが自分だけの「ひなたの道」「人生のど真ん中」を見つけ、「月」から「太陽」へと変わる物語になるのかも、と期待してしまう。

カムカムエヴリバディ 佐々木希

 さて、先週の試着室での多幸感あふれるラストシーンがまるで別世界のように、ジョーがるいに決別を言い渡すという衝撃のラストを迎えた第12週。自分の存在意義そのものであったトランペットが吹けなくなり、空っぽになってしまったジョー。るいは、やっと見つけた「ひなたの道」に連れ出してくれる相手だと思っていた愛するジョーから、安子との決別の“再演”を食らってしまう。幸せの絶頂から突如突き落とされるという緩急に動機が止まらないが、皆既月食のように真っ暗になってしまったジョーに、これからるいがどう寄り添っていくのかが見ものだ。次週の予告を見ると、るいがジョーを支えることと同時進行で、安子との関係に向き合っていきそうな予感がしている。るいとジョー、2つの「月」がふたたび互いを照らし合い、ひなたの道へと歩き出すことを願ってやまない。

※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」が正式表記。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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