2021年の年間ベスト企画

藤原奈緒の「2021年 年間ベストドラマTOP10」 心の痛みに触れ、現代を暖かく照らす

 上位に挙げた3作品は、現代を暖かく、時に鋭く照らした。安達奈緒子『おかえりモネ』は今を生きる私たちが、どう生きるべきかの指針となり得る作品であり、何より想像することさえできない人の心の痛みに一生懸命寄り添おう、触れようとする物語だった。同様に東日本大震災から10年を描いた特集ドラマ『あなたのそばで明日が笑う』(NHK総合)も、実に丁寧に、心の痛みの程度の違いによって生まれかねない分断と、その壁を越えたいと思うことについて描いていた。『お耳に合いましたら。』や『スナック キズツキ』(テレビ東京)、『うきわー友達以上、不倫未満―』、水橋文美江脚本『古見さんは、コミュ症です。』もまた、それぞれに孤独を抱えた人々の心にそっと触れるような、優れた作品だった。坂元裕二『大豆田とわ子と三人の元夫』は、おしゃれな恋の物語であると同時に、否応なく変化せずにはいられない人との関わりの中で、自分の人生をどう生きるかを問う物語だった。ドラマが終わった今でも、ふと日常の中で、とわ子の言葉が寄り添ってくれることがある。そんな、永遠に心に残る名作である。

 コロナ禍2年目となり、新しい生活様式は日常となった。直接的にコロナ禍を描く作品は4月期以降減っていったが、それでもコロナ禍ゆえに、周囲の喧騒から離れ、以前より内省的になって、自分の人生や他者との関わりを考えるようになった私たちの姿を、作品はしっかりと反映していたように思う。『おかえりモネ』『お耳に合いましたら。』『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京)にラジオ/Podcastと向き合う人々の姿が登場するのも興味深い。そのあたりは『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)にも繋がっていくことだろう。それもまた、楽しみである。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』総集編
【前編】NHK総合にて、12月29日(水)15:05~16:30放送
【後編】NHK総合にて、12月29日(水)16:30~17:55放送
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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