新海誠『すずめの戸締まり』は“新境地かつ原点回帰”作品に? 映画興行起爆剤への期待も

 新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』の製作発表会見が12月15日に実施された。同日には、2022年の東宝ラインナップが発表されたが、記者会見を行ったのは『すずめの戸締まり』のみ。そのことからも、新海監督への東宝の期待度がうかがえるとともに、現在の日本映画界の中で新作がもっとも注目されている作家の証と言っても過言ではないだろう。

 国内興収250億円突破の大ヒットを記録した2016年の『君の名は。』、国内で観客1063万人を動員した2019年の『天気の子』と、名実ともにアニメーション界の、映画界のトップクリエイターとなった新海監督。大まかなあらすじ、一部のスタッフしかまだ発表されていないが、一体どんな作品になるのだろうか。

 ライターの杉本穂高氏は「ある意味“原点回帰”と言える作品になるのではないか」と語る。

「発表されたあらすじには、『日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描くロードムービー』とありました。『君の名は。』『天気の子』の2作品は、“東京”の描写が印象的でしたが、今回は日本全国が舞台ということもあり、映像の印象もだいぶ変わるような気がしています。また、『今までとは少し違ったアクションが盛りだくさん』という言葉もありましたが、直近の2作品とは大きくテイストを変えるのではないかと。過去作でも本格的なアクションは扱っていないだけに、どんな形になるのかまったくイメージできません。『過去2作が簡単に思えるほどに、今回はビデオコンテを作るのが本当に大変だった』と会見で話していたように、かなり気合の入ったものになっているのではないかと楽しみにしています。直近2作と大きく違うものになる可能性がある一方で、“原点回帰”と言える作品にもなるのではないかとも思っています。というのも、『天気の子』には参加していなかった、作画監督の土屋堅一さん、美術監督の丹治匠さんと再びタッグを組んでいるからです。2人とも『君の名は。』以前から新海監督とはタッグを組んでおり、その特性を熟知されています。それだけに新海監督の初期作品にあったような、ある種の“実験性”も孕んだ作品になるかもしれませんね」

 また、コロナ禍によって、映画興行は未だ復活の兆しが見えない状況が続いている中、観客を映画館に呼び戻す意味でも、2022年秋公開が予定されている『すずめの戸締まり』にかかる期待は非常に大きい。杉本氏は、新海監督自身も“映画館への恩返し”が念頭にあるのではないかと続ける。

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