『カムカムエヴリバディ』勇ちゃんの「あんこ」呼びが再び “叶わぬ恋”は報われるのか

『カムカム』勇の“叶わぬ恋”は報われるのか

「あんこ(安子)。わしと結婚してほしい」

 勇(村上虹郎)が長年、心の奥に秘めていた思いが、直球のプロポーズの言葉となって安子(上白石萌音)へと投げられた。その呼び方は「義姉さん」ではなく「あんこ」。雉真家の親族としてではなく、かつての幼なじみとして。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第35話にて、安子は思いがけない勇の決意を前に目を丸くする。

 勇は兄の稔(松村北斗)と安子の結婚を後押しした一人であるが、同時に安子への思いを封印していたからこそ成り立っていた関係性であった。まだ学生の頃、稔とのキャッチボールで「今年ゃあ最後の夏なんじゃ。諦めん。甲子園も、あんこも」と宣言していた勇。しかし、物分かりのいい彼は兄と安子がどれだけ思いあっているかを痛感していた。

 「わしにゃあ野球しかなかった。兄さんに勝てるとしたら野球しか」──その年の甲子園が中止となり、朝丘神社の境内に座って落ち込んでいる勇に安子は、稔を通じて見える勇の信念の強さを説くが、本当に勇が欲しかったのは安子自身の言葉だったはずだ。勇は「なんでおめぇはそねん……」と安子をそっと抱きしめ、好きだという思いをしまい続けてきた。

 それから稔が戦死し、勇は雉真家の跡取りに。千吉(段田安則)から会社を継ぐ者として認められ、「安子さんと一緒になれ」と告げられたことがプロポーズのきっかけにある。そして、その告白を後押ししたのは勇にそっと思いを秘めていた女中の雪衣(岡田結実)だった。

 「安子と勇」「勇と雪衣」の関係性はどこか似ている。思われる側の鈍感さ、立場の違いからの叶わぬ恋。算太(濱田岳)の一言から、雪衣の厳しい言葉は安子への嫉妬であること、そしてその思いは自分に向いてることに気づいた勇。怒鳴ってしまったことと好かれていることがごちゃ混ぜになり、どこか気恥ずかしそうに雪衣に謝りにくる勇だったが、逆に雪衣から励まされる形となる。「諦めることねぇと思います。安子さんもるいちゃんも。坊ちゃんのこと頼りにしてるはずです」──雪衣の表情は不思議と晴れやかだ。一人になった時の笑みには少し切なさも見える。大切な人の思いを後押しするというのは、かつての勇の姿ともリンクしている。そして、そんな雪衣にそっと寄り添うのが算太だった。

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