『最愛』梨央と梓、母と娘が見せた同じ決意 真実を受け入れる覚悟はいいか?

『最愛』最後の疑いは、藤井から大輝へ

 私たちが知る15年前のあの日、大輝は藤井たちとの祝勝会ができず後ろ髪を引かれながらも、達雄の車で駅まで送られて姉の結婚式に向かっていたと記憶している。翌々日、受験を無事終えた梨央の携帯電話には、姉と並んで変顔を決めた大輝の写真が届いていた。そのことからも大輝が結婚式場に駆けつけたのは間違いないだろう。

 だが事件があった夜に、一度戻っていたとしたら? 例えば、あの悪天候で電車が動かなくなって、組合の会合で遅くなった達雄の車に乗って帰って来ていたとしたら? そして翌日、梨央と同じように改めて姉の結婚式会場へと向かっていたとしたら……? これまで見えていなかった可能性が浮かび上がってくる。

 しかし、もしあの場に大輝がいたのだとしたら、これまでの知らない振りをしすぎではないか。梨央の苦しみを、優の戸惑いを、全て知っていて刑事になったとは思えない。いや、思いたくない。加瀬(井浦新)が疑惑の特注ペンをしっかり持っていたように、大輝も戻ってはいたとしても事件の当事者ではなかったという線はないだろうか……と、つい模索してしまう。

 信じたいという気持ちが、真実に蓋をすることがある。想いが強くなるほど、思考を止めてしまうことがある。そのブレーキを取っ払うことが、ブラックボックスの最後のキーなのだとしたら、あまりにも胸が苦しいではないか。

 「ひとりで大丈夫」。梓と梨央が加瀬にかける言葉のリンクに、母と娘の同じ決意を感じる。「どんな事実でも私たちは受け入れる覚悟です」。そう彼女たちは心を決めた。どんなに辛く厳しくても、誰かのためにありのままを受け入れることも愛の形だ。さあ、来週までに私たちも心を決めなくてはならない。どんなエンディングでも、受け入れる覚悟を。それが視聴者ができる、この作品への愛の形なのだから。

※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます(2021年12月11日11:23)
誤:現在は岐阜県で刑事をしている藤井(岡山天音)
正:現在は富山県で刑事をしている藤井(岡山天音)

■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル「君に夢中」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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