『日本沈没』第1章が完結 副題「希望のひと」に託されたメッセージ
その上で、本作に顕著な特徴としてある種の「救い」が描かれていることが挙げられる。倒壊した家屋、破壊された道路や橋、都市機能を喪失した街並み、避難所になった体育館とうずくまる被災者、支援物資の入った段ボール、自衛隊の車両等々、相次ぐ地震や水害に見舞われたわが国で多少なりとも既視感のある光景だ。もちろん、ドラマの舞台は架空の現実で、登場する人物も架空の存在ではある。その中で黒子である官僚を主役に据えたことに大きな意味を感じる。進退をかけて政治家に直言し、住民のために知恵を絞る彼らは、本来であれば表に出てこない人々だ。規模や立場の違いこそあれ、天海のような人は多くいるに違いない。実際、誰から言い出すでもなく、災害時に皆のために献身的に動く人たちを、私たちは身近な場所で目にしてきた。
もし関東沈没が政治家の利害衝突に終始し、住民避難や災害支援が政治マターでしかなかったら、それらを描いた作品は皮肉まじりのサスペンスか、せいぜいよくできた政治的プロパガンダにすぎない。また、私たちもわざわざそうしたドラマを日曜の夜に見ようとしないだろう。天海や椎名のキャラ造形にはわけがあって、一人の人間として悩みを抱えながら奮闘する姿に、この国の希望を託したいと思う人は多いはずだ。私たちのささやかな願いを投影した存在が天海たちであり、副題『希望のひと』はひるがえってこの社会の希望の在り方を問いかけている。
■放送情報
日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、高橋努、浜田学、河井青葉、六角慎司、山岸門人、竹井亮介、高野ゆらこ、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、小林隆、伊集院光、風吹ジュン、比嘉愛未、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之
ナレーション:ホラン千秋
原作:小松左京『日本沈没』
脚本:橋本裕志
プロデュース:東仲恵吾
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/nihon_chinbotsu_tbs/
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公式Instagram:nckibou_tbs