『ビルド・ア・ガール』が描いたジョアンナの奮闘 自分らしさの脆さも映した作品に

『ビルド・ア・ガール』描くティーンの奮闘

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、4年間のアイプチ生活で目が二重になった北村が『ビルド・ア・ガール』をプッシュします。

『ビルド・ア・ガール』

 『ブリジット・ジョーンズの日記』製作陣による“青春エンパワーメントムービー”『ビルド・ア・ガール』は、音楽の夢を捨てきれない父親、子育てに疲弊した母親、兄妹たちとともに生活する高校生・ジョアンナの奮闘が描かれた作品。主役は『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』でも話題になったビーニー・フェルドスタインです。

 実を言うと苦手かも……と思っていた作品でした。『ブリジット・ジョーンズの日記』ファンとしては気になってはいたものの、本作のポスタービジュアルにつけられた「わたしはわたし。がむしゃらに輝け!」というコピーをみて、自分らしさ最高!的なやつかな……なんて思ってしまったから。周囲に溶け込むために見た目や性格をまるっと変えてきた筆者のような人間には眩しすぎるメッセージなのです。

 自分らしさの大切さを訴える作品にふれるたび、「私がこんなふうに生きたところでこんなチャーミングには見えないだろうし、こんな幸せにはなれないだろうな」とかどうしてもひねくれてしまうのが正直なところ。自分らしさを出すことは勇気と強さが必要で、そのどちらもない筆者としては、等身大な主人公を目の当たりにすると、自身のダメさを再確認させられるような気持ちになるのです。自分にはないものを持っているからこそ、憧れや嫉妬のようなものがあるのだと思います。

 話はそれましたが、本作はそんな私のような人にもおすすめしたい一本でした。主人公・ジョアンナは、常に自分の気持ちに正直で、前向きで、思い切りがいい女の子。凹んで「死んだ方がマシ!」とか言いながらも自力で立ち上がれる強さがあるし、ずば抜けた文才で音楽ライター“ドリー・ワイルド”として超売れっ子になり、やがて家族を養っていけるほどにもなる。自分で「コレ!」と思った方向にまっすぐ突き進み、自分の意思もはっきり言える。筆者から見たら“自分らしさ”の象徴のようなキャラクターです。

 だけど本作は、そんな彼女の人生を単純なハッピーエンドにはしません。超辛口ライターとして評価されたジョアンナ。学校生活も冴えないし、早くこの生活から抜け出したい!と思っていた彼女は、承認欲求を満たしてくれる職場の求める姿こそが自分の正しい在り方だと思うようになっていく。職場の男性たちとともに派手な生活を送るようになり、求められる姿でいることで自信を得ていきます。このジョアンナの姿は、自分らしさというものがいかに脆く、維持することが難しいものであるかをリアルに訴えてくるのです。

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