『わかっていても』は“写真集”を目指して作られた? 韓国の恋愛ドラマと本の関係性

 韓国の恋愛ドラマをいくつか観ていると「あ、また出てきた……」と気になることの一つに、本の引用があるのではないだろうか。

 例えば『キム秘書はいったい、なぜ?』に出てきたエッセイ『すべての瞬間が君だった』は日本でも翻訳本が話題、ベストセラーとなったように、ざっと思い出すだけでも『ロマンスは別冊付録』『それでも僕らは走り続ける』『ボーイフレンド』などなど……数々の人気ドラマに、心に残るエッセイ、詩集、絵本が使われている。「韓国ドラマ『〇〇』に登場した一冊です」という類の謳い文句で売り出されている本を見たことがある人も多いと思う。

 昨年、キム・スヒョン主演で話題となった『サイコだけど大丈夫』のヒロインは心に傷を抱えた人気童話作家という設定だったし、日本でもリメイクされた『彼女はキレイだった』のファン・ジョンウムはラストで夢を叶え絵本作家になった。『主君の太陽』で、過去の悲しい事件以来文字を読むことができなくなってしまったソ・ジソブ演じる主人公が、トラウマを乗り越えるきっかけとして読もうとする一冊『あらしのよるに』は、もともと日本の絵本だ。

『サイコだけど大丈夫』Netflixにて配信中(写真はtvN公式サイトより)

 個人的にも韓国ドラマを観るようになってずっと気になっていたのだが、特に恋愛ドラマには、このように特定のエッセイ・詩集や絵本がストーリーと絡んで紹介されるというシーンがすごくよく出てくる。

 ヒロインや主人公が大切にしている一冊、というのも多い。韓国ドラマの中では落ち込んだり悩んだりしている主人公に言葉を贈るということがよくあり、それはこの本に書いてあったんだ、といった流れで紹介される。

 単に引用にとどまらず韓国の恋愛ドラマはそれ自体が“心の一冊”になるように仕立てられていると思う。“童話”や“詩集”のような一冊。毎日大変で辛いことが多くても、真面目に一生懸命頑張っていればきっといいことがありますよ、という“童話”。あるいは日常の些細なことを美しく刹那的な、でも希望に満ちた言葉で綴る“詩集”でもある。

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