シャン・チーだけじゃない! MCUフェーズ4から登場する8人の新ヒーローを徹底解説

MCUフェーズ4から登場、8人の新ヒーロー

異次元からやってきたヒーロー、ミス・アメリカ

 『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス(原題)』(2022年公開予定)に登場するというミス・アメリカは、かなり特殊な設定のヒーローだ。2011年の『Vengeance #1』で初登場した彼女は、マルチバースの外にあるユートピア・パラレルからやって来たラテン系のティーンエイジャー。女性しか存在しないその世界で、彼女は2人の母のもとに生まれた。6歳のときに故郷が崩壊の危機に見舞われ、彼女の母たちは自らを犠牲にしてその地を救う。2人の英雄的行動に感銘を受けた彼女はヒーローになる決意をし、平和なユートピア・パラレルを去った。さまざまな時空を旅したあと、彼女はアミリアとエレーナ・チャベスの養子となり、アメリカ・チャベスとして地球に留まることにする。異次元からやって来た彼女は、飛行能力や超人的な筋力、耐久力を持ち、時空間移動が可能だ。当初はティーン・ブリゲイドというチームに所属していたが“音楽性の違い”から脱退し、ヤング・アベンジャーズに参加する。彼女の目的は、ユートピア・パラレルの神デミアージになるかもしれないウィッカンを守ることだ。そのほかにも、女性ヒーローチームAフォースや、ブラックパンサーが招集したアルティメッツでも活躍している。

アイアンマンの弟子、アイアンハート

 単独ドラマに先がけて2022年公開予定の『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー(原題)』に登場するアイアンハートは、本名リリ・ウィリアムズ。アフリカ系の彼女は、15歳でマサチューセッツ工科大学で学位を取る天才だ。2017年に刊行された『Invincible Iron Man Vol. 3 #3』でアイアンハートとなる前年に、『Invincible Iron Man Vol. 2 #7』で一般人として初登場している。アイアンマンのパワードアーマーを分解・分析し、似たものを作ろうとしていたリリの才能をトニー・スタークも認めており、本格的にアーマーを作ることを許可。シビル・ウォーでトニーが昏睡状態に陥ったとき、彼女はA.I.に人格を移植された彼の力を借りて、自らのアーマーを完成させアイアンハートとなった。リリはのちに、カマラが結成したチャンピオンズに参加している。

狂気のヒーロー、ムーンナイト

 ムーンナイトことマーク・スペクターは、1975年の『Werewolf by Night #32』で初登場した、それなりに歴史のあるヒーローだ。元傭兵の彼は、エジプトでの仕事中に雇い主に騙され瀕死の重体となってしまう。そこに古代エジプトの月の神コンシューが現れ、復讐の化身ムーンナイトという役目を与えられる契約を交わし、復活した。主にビジランテとして活動する彼は、傭兵時代に稼いだ財産をもとに投資や美術品売買で財を成した資産家で、それを活動資金に充てている。しかしマークは解離性同一性障害を患っており、常に複数の人格が頭の中でバラバラのことを言う状態に悩まされているのだ。一時期はスパイダーマンとキャプテン・アメリカ、ウルヴァリンの人格を自らのなかに生み出し、コミックファンからは「ひとりアベンジャーズ」と揶揄されていた。しかし彼は自分の精神的な不安定さを客観的に理解しており、複数の人格を使い分けることでさまざまな状況に瞬時に対応できることが強みとなっている。元傭兵であるため戦闘能力や銃器の扱いに長け、キャプテン・アメリカからも高く評価されている。彼が結成したシークレット・アベンジャーズは、事件が発生する前に秘密裏に行動するチームだが、ムーンナイトもその一員に選ばれた。ドラマは配信開始日未定だが、オスカー・アイザックが主演を務めることが発表されている。

ブルース・バナーのいとこ、シー・ハルク

 1980年の『Savage She-Hulk #1』で初登場したシー・ハルクは、その名のとおり女性版ハルクだ。ブルース・バナーのいとこである弁護士のジェニファー・ウォルターズは、ある殺人事件に関わった男の弁護を依頼されていたため、事件の黒幕に命を狙われていた。そこに警察や軍隊に追われたブルースが助けを求めてやって来たのだが、ジェニファーは彼の目の前で殺し屋に撃たれてしまう。慌てたブルースはその場で自分の血液を彼女に輸血。その影響で、ジェニファーもまたハルクと同じ変身能力、そして怪力を手に入れた。シー・ハルクはハルクと違って変身後も理性を保ちつづけることができる。過去にアベンジャーズに所属していた彼女は、ザ・シングの代役としてファンタスティック・フォーにも参加した。ヒーロー活動の傍ら、スーパーヒーロー向けの法律事務所グッドマン、リーバー、カーツバーグ・アンド・ホリウェイ法律事務所で弁護士としても活躍。その後、独立して自分の事務所を構えた。しかし2016年に刊行されたシリーズ『Civil War II』でサノスと戦った彼女は、一命は取り留めたものの以前のような活躍はできなくなってしまう。

新ヒーローの登場は「ヤング・アベンジャーズ」結成への布石か?

 こうして見ていくと、フェーズ4でデビューする新ヒーローは若いメンバーが多い。各キャラクターの紹介でも触れているが、これは若手ヒーローチーム「ヤング・アベンジャーズ」結成への布石と見る向きが強くなっている。コミックでの同チームのメンバーは、ここで触れたケイト・ビショップとミス・アメリカ以外にも、すでにMCUに登場しているのだ。『アントマン』シリーズや『エンドゲーム』で登場したスコット・ラングの娘キャシーは、スタチュアというヒーロー名でヤング・アベンジャーズに参加する。ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021年)に登場したワンダとヴィジョンの双子の子どもたちトミーとビリーは、スピードスターのスピードとサイキック系ヒーローのウィッカンとしてチームに所属。そしてドラマ『ロキ』(2021年)に登場したキッド・ロキもヤング・アベンジャーズのメンバーだ。ここまで揃うと、むしろヤング・アベンジャーズがMCUに登場しないのはおかしいのではないかとすら思えてくる。もちろん映画のための改変で、ミズ・マーベルやアイアンハートがヤング・アベンジャーズに参加する可能性もあるのではないだろうか。

 また、フェーズ4で登場する新ヒーローたちは多様性に富んでいる。8人のうち5人が女性、4人が非白人、女性しかいない世界からやって来たアメリカ・チャベスは同性愛者で、ムーンナイトは精神疾患を抱えている。どのキャラクターも、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が共感できる要素を持っているのだ。原作コミックでも比較的新しいキャラクターが多くMCUに参戦してくることで、アメコミが社会の変化に合わせて多様化し、変化していることがわかる。今後、さらに進化していくMCUは、どんな物語を私たちに届けてくれるのだろう。期待は膨らむばかりだ。

■公開情報
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
全国公開中
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
出演:シム・リウ、トニー・レオン、オークワフィナ、ミシェル・ヨーほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021

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