“韓流四天王”からハリウッドを経て国際的スターへ イ・ビョンホンの俳優生活30年を辿る
“役者イ・ビョンホン”を堪能するーー。韓国のタイムリミット・ディザスターアクション『白頭山大噴火』は、そんなふうに噛みしめることのできる作品となった。イ・ビョンホンは本作で朝鮮半島の一大危機を救うキーパーソンとなり、意外ではあるが初共演のハ・ジョンウとのバディぶりで笑いと涙までもたらした。
2000年代前半、第1次韓流ブームに沸く日本で“韓流四天王”のひとりとして人気を博し、その後はハリウッド映画にも出演してきたイ・ビョンホン。今年、ソン・ガンホが審査員を務めた第74回カンヌ国際映画祭では最新作『非常宣言(原題)』の公式上映が行われ、閉会式にはプレゼンターとして登壇した。韓国を代表する俳優にして、また国際的スターとして、俳優生活30年を迎えてなお第一線に立ち続けるイ・ビョンホンに迫った。
『白頭山大噴火』で改めて実感する多面多彩な魅力
『白頭山大噴火』は、大ヒット作『神と共に』シリーズで地獄を、韓国初のSF超大作『スペース・スウィーパーズ』では宇宙を壮大なVFXで映像化してきたデクスター・スタジオと、天下のCJ ENMがタッグを組んだ超大作。その圧巻のスペクタル映像のみならず、日本公開前作『KCIA 南山の部長たち』では終始抑えた“静”の演技が絶賛されたイ・ビョンホンの多彩な魅力を改めて堪能できる面白さがある。
北朝鮮と中国の国境付近に位置し、朝鮮半島で最も高い白頭山(ペクトゥサン)がある日突然、噴火。地質学者カン・ボンネ教授(マ・ドンソク)の理論によると、白頭山麓で大規模な爆発を起こすことができれば、半島がほぼ壊滅する大噴火を防ぐことができるという。残された時間は75時間。韓国のチョ・インチャン大尉(ハ・ジョンウ)とその部隊は北が隠し持つ核兵器を利用するため人民武力省の工作員リ・ジュンピョンの手を借り、成功率わずか3.48%の作戦に挑んでいく。
まずは二重スパイの嫌疑で収容所に囚われていたジュンピョンを脱出させたものの、彼は飄々とした不遜な態度で、殴られても不敵に笑い、チョ大尉たちを翻弄する。秘かに中国との取引を企てたかと思えば、介入してきた米軍と銃撃戦の果てにカーチェイスも。“何を考えているのか分からず、次の行動が全く読めない”。そんなジュンピョンを演じているのがビョンホンだ。伸びっぱなしの髪の間から鋭い眼光を覗かせて姿を現した瞬間から、その得体の知れなさでスクリーンに緊張感をもたらし、観る者の好奇を刺激する。
だが、やがて、チョ大尉の妻ジヨン(ペ・スジ)が待望の第一子を妊娠中であることを知り、部下から慕われる彼の人間味に触れるにつれ、ジュンピョンには変化が見えていく。任務絶対で娘の顔も忘れてしまいそうな“父親らしくなれなかった男”と、絶体絶命の作戦により“父親になれないかもしれない男”が、タイムリミットが迫る中で心を通わせ、次第にバディとなっていくのだ。
チョ大尉を演じたジョンウとキレキレなガンアクションで息を合わせ、アドリブの応酬で韓流ドラマファンまでも喜ばせる笑いを提供し、手に汗握る状況を和ませる一方、“父親の顔”となればエモーショナルな演技を見せるビョンホン。共に覚悟を決め、チョ大尉に“大切なもの”を託すクライマックスまで、一時たりとも目が離せなくなる。