『Sonny Boy』の“音”の演出に注目 劇伴がないことによって生まれる効果とは
クレジットされた9組のアーティストらの音楽は、劇伴というよりも挿入歌のように、しかも急なタイミングで挿しこまれてくる。それは各々の登場人物にとって大事なシーンであり、物語が一気に動き出すタイミング、視聴者にむけたアラームのようでもある。
台本・資料を基にし「どのようなシーンに登場するか?」を想像しつつ生み出された音楽は、ザ・なつやすみバンド、ミツメ、台湾の落日飛車(Sunset Rollercoaster)ら、インディミュージックらしいソフトタッチな手触りの楽曲が多い。
そして主題歌を歌うのは、思春期の少年少女がもつ特有のマインドネスを、グシャグシャになったノイズギターにのせて歌い続ける銀杏BOYZだ。各話の最後に銀杏BOYZのサウンドと言葉で締められるが、この作風・ストーリー・「無音」の演出にあって、より強く視聴者に刺さるだろう。
銀杏BOYZ、江口寿史といった人選、各話のサブタイトルなど、夏目監督は「好きなものを詰め込んで、全て出しきった私小説的な作品」(公式サイトより)と語っている。振り切った演出とストーリーであるが故、どこか説明不足で余白を感じられるのも確かだ。説明不足すぎるがゆえに、理解が追い付かない視聴者が出てくるだろう。
アニメ作品にとって朗報なのが、10年前とは勝手が違い、最新のアニメ作品は大きなスパンを置かずに各配信サイトにて視聴できる時代になったことだ。大きく話題を呼んでいる作品をすぐに視聴できることで、話題の波が収まることなく、むしろ高まりやすい環境が出来上がっている。と同時に、20年近いアニメシーンの興隆によって、アニメ作品への理解力もグッと上がっているのではないだろうか。
エッジが効きまくった本作品を制作するうえで、夏目監督はどのように感じていたのか。それを本記事の締めにしたいと思う。
夏目「最近の視聴者って、映像的なリテラシーは実は高いと思っているんです。自分としても、よくわからないけど何か気になるというのは正解だと思っていて、何となくひと言で言い表せない作品が作りたかったんです」(参照:Music|TVアニメ『Sonny Boy -サニーボーイ-』公式サイト)
■放送情報
TVアニメ『Sonny Boy』
TOKYO MXほかにて放送中
声の出演:市川蒼、大西沙織、悠木碧、小林千晃ほか
監督・脚本:夏目真悟
キャラクター原案:江口寿史
アニメーション制作:マッドハウス
キャラクターデザイン:久貝典史
美術監督:藤野真里(スタジオPablo)
色彩設計:橋本賢
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽アドバイザー:渡辺信一郎
主題歌:銀杏BOYZ「少年少女」
(c)Sonny Boy committee
公式サイト:sonny-boy.net
公式Twitter:@sonnyboy_anime