『ONE PIECE』ゾロ、『銀魂』土方などで見せる、声優 中井和哉の“抜き”の美学
そして、何より「決めるところは決めて、抜くところは抜く」メリハリのある演技が視聴者を魅了する。特に『銀魂』は終始コミカルだが、時折シリアスな展開が挟まれる温度差が激しい作品。土方も新撰組の“鬼の副長”として普段は恐れられているが、極度のマヨラーだったり、妖刀「村麻紗」の呪いにかかった時にはヘタレでオタクな別人格“トッシー”が現れたりと、色々な表情を見せる。
また『炎炎ノ消防隊』で演じた桜備は主人公が所属する第8特殊消防隊の頼れる大隊長であり、正義感が強くとにかく面倒見がいい。土方ほどのギャップはないものの、「筋トレを超えた筋トレに近い何か」と称されるほどハードすぎるトレーニング風景にはおもわず笑ってしまう。ゾロ、土方、桜備と各々の魅力は語りつくせないほどあるが、やっぱり人気を集めるのはそういった“ツッコミどころ”なのではないだろうか。中井の低音ボイスと振り幅の効いた演技が、かっこいいのにどことなく諧謔的な人間味溢れるキャラクターを作り出している。
ただ、『僕のヒーローアカデミア』劇場版第3弾で中井が演じているのは“ヴィラン”のフレクト・ターン。しかも「“個性”は世代を経る毎に混ざり深化し、いずれコントロールできなくなる」という個性終末論を掲げ、「人類の救済」と称して“個性”所持者を殲滅しようとする組織・ヒューマライズの指導者という今作におけるラスボス的存在だ。ゾロのようなヒーロー(海賊だけど)ポジションを担ってきた中井が一体どんな悪役を?と思うが、「人類の救済を!とみんなをごまかすために言っているわけではなく、本当に人類を守りたいという思いがベースにある」(参照:MANTANWEB「<中井和哉>“敵”役の醍醐味 劇場版「ヒロアカ」 思考停止せずに“悪”と向き合う」)と語っているようにやはり今回もどこか魅力的なキャラクターに仕上がっているよう。
どんな役柄でもたちまち愛らしさのあるキャラクターに変える、少年マンガ原作のアニメには欠かせない声優・中井和哉。アニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)も1000話到達まであとわずか。引き続き、中井が演じるゾロの活躍にも注目していきたい。
■放送情報
『ONE PIECE』
フジテレビ系にて、毎週日曜9:30〜放送
声の出演:田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明、大谷育江、山口由里子、矢尾一樹、チョー、宝亀克寿ほか
原作:尾田栄一郎『週刊少年ジャンプ』(集英社)連載
企画:狩野雄太(フジテレビ)、柴田宏明
シリーズ構成:米村正二
音楽:田中公平、浜口史郎
製作担当:赤堀哲嗣
キャラクターデザイン:松田翠
総作画監督:市川慶一、松田翠
美術デザイン:吉池隆司
美術監督:本間禎章
色彩設計:堀田哲平、永井留美子
撮影監修:和田尚之
撮影監督:保坂友哉
シリーズディレクター:長峯達也、暮田公平、伊藤聡伺
制作:フジテレビ、東映アニメーション
公式サイト:https://one-piece.com/