『ダイの大冒険』にみる、“往年の名作”を現代にアニメ化する覚悟と矜持

 2020年10月からスタートしたTVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』。『週刊少年ジャンプ』で1989年から1996年にかけて連載されたマンガを原作とした本作は二度目のアニメ化だが、現代におけるリメイクのお手本とも言えるような作品となっている。物語が中盤を迎えた今、改めてその魅力を振り返ろう。

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 原作ファンにとって本作の最大の魅力は、物語を最後まで描くことが期待できることだろう。1991年に始まったアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』は、残念ながら物語の途中で1年で放送を終えた。しかし『ダイの大冒険』(2020年版)は放送開始前の特番でスタッフ陣から「今回は完結できる」「最後まで走りきりたい」といった発言があり、完結への並々ならぬ決意を感じさせた。よほどのことがない限り物語の終わりまで描かれるはずだ。

 その完結もそれほど遠くはならなさそう。本作はときに展開を大きく変えない程度の改変(第1話を原作と比べてみるとよくわかる)を交えながら、テンポよく物語を進めている。『ダイの大冒険』(1991年版)では主人公・ダイと超竜軍団長のバランとの戦いが始まるのが最終盤の第43話なのに対し、『ダイの大冒険』(2020年版)では第24話ということからもその速度感の違いが伺える。

 アニメに限らず近年の物語はスピーディな展開が好まれる傾向にあるが、今のところ『ダイの大冒険』(2020年版)は不自然さを感じさせることなくそれに応えられている。このままのペースで、原作通りに話が進めば本作の完結を迎えるのは2022年9月末くらいだろうか。そこまで一気に駆け抜けてくれることを期待しよう。

 またビジュアル面の進化も目を見張るものがある。上記したバラン戦のクライマックスにおける“動きまくる”バトル作画はSNS上でも大きな反響があり、最近では超魔生物となったハドラーのデビュー戦もド迫力で描かれた。ほかにも武闘家マァムは原作の生足から黒タイツ装着となったことでキャラクターデザイン発表時には一部ファンから残念がられていた。しかし第37話のバトルではその変更を活かしたかのようなフェティッシュな構図が連続し、スタッフ陣の巧みな手腕が多くの人を驚かせた。

 なお、原作からのアレンジは物語やキャラクターデザインだけにとどまらない。例えばハドラーが放つ魔炎気についての解説が追加されるといった補完的なものもあれば、買い物先のデパートでレオナがタピオカドリンクを飲むといったお遊び的なものもある。熱心なファンであれば、原作と読み比べるのもいいだろう。

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