『僕のヒーローアカデミア』は“限界突破”し続ける 原作、TVアニメ、劇場版から紐解く魅力

 世界累計発行部数5000万部を超える『週刊少年ジャンプ』の人気漫画『僕のヒーローアカデミア』(作:堀越耕平)。8月4日に発売された最新31巻で、物語は300話へと到達。『ジャンプ』本誌ではクライマックスとなる「終章」が展開中で、最新話が発表されるたびにTwitterでトレンド入りするなど、かつてない盛り上がりを見せている。TVアニメは第5期が放送中、初の原画展となる『僕のヒーローアカデミア展 DRAWING SMASH』も盛況だ。

『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』

 そして、8月6日には劇場版第3作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』が劇場公開を迎えた。こちらでは大の『僕のヒーローアカデミア』(以下、『ヒロアカ』)好きを公言する人気実力派俳優・吉沢亮がオリジナルキャラクターのロディ・ソウルを演じ、世界規模のテロ事件に主人公の緑谷出久(デク)と仲間たちが立ち向かう姿が大スケールで描かれる。

 その公開を記念して、日本テレビ系『金曜ロードショー』にて8月6日21時から、記念すべき劇場版第1作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』が地上波テレビ初放送(本編ノーカット)を迎える。本稿では、改めて本作の内容を振り返るとともに、劇場版第2作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』、公開されたばかりの劇場版第3作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』についても横断して紹介。「プルスウルトラ(さらに向こうへ)」の名のもとに、限界突破をし続ける本シリーズの魅力を一端でも感じていただければ、幸いだ。

※なお、以下の文章内では劇場版第1作・第2作のクライマックスの展開も紹介するため、未見の方はご注意いただきたい(第3作においては、ネタバレを避けて記述する)。

 まずは改めて、『僕のヒーローアカデミア』の概要をおさらいしよう。世界総人口の約8割が“個性”と呼ばれる特異体質を有する世の中。混乱を避けるため、各国の政府は個性の制限を図ることとなった。そんななか、厳しい鍛錬を耐え抜いて個性使用の資格免許を獲得し、人々を護るために奮闘する「プロヒーロー」が職業として台頭。

 日本国内No.1ヒーローとして生きる伝説となったオールマイトに憧れる少年・緑谷出久は、ある事件に巻き込まれたことから彼に見いだされ、個性「ワン・フォー・オール」を譲渡される。継承者となった緑谷は、オールマイトの出身校でありヒーロー養成高校の難関・雄英高校の入学試験に辛くも合格し、「最高のヒーロー」に向かって学友たちと切磋琢磨していく――というものだ。

 『ヒロアカ』の劇場版には一つ特徴があり、原作と連結した物語が展開する。映画は映画として独立したものとは異なり、かといって原作で描かれた物語をアニメ映画化したものでもない。完全オリジナルストーリーでありながら、原作につながる物語という意味では、同じジャンプ作品だと“空白の期間”を描く『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』や、元海軍大将のゼットが登場する『ONE PIECE FILM Z』に近いといえるかもしれない。

 そのため、まず把握しておくべきは「時系列的に、どの時期なのか」だ。特に各キャラクターの成長を一貫して描いている『ヒロアカ』では、どの時期の物語かによってデクの強さや使える技、コスチュームに至るまで異なっている。時期設定が、物語の生命線なのだ。

 原作者の堀越氏が劇場版の全作品で総監修とキャラクター原案を担当していることもあって、この部分の制作陣のこだわりは非常に強い。第2作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』では、デクと幼なじみでクラスメイトの爆豪勝己との関係性をしっかりと描くため、TVアニメの“先”、つまりアニメがまだ追い付いていない時期の物語を映画で先に描くというレアなアプローチを決断(アニメでは未修得の技「エアフォース」が登場)。こうしたエピソードからも、原作サイドとアニメサイドの密な連携が感じ取られる。

 劇場版第1作『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~』においては、「期末試験」と「林間合宿」の間に起こった事件が描かれる(原作でいうところの70話付近。TVアニメでいうと第2期と3期の間だ)。

 デクでいうと、シュートスタイルの修得前(当然、エアフォースや黒鞭は使えない)。さらに、オールマイトが諸悪の根源オール・フォー・ワンと神野で戦う以前でもある。つまり、オールマイトがまだマッスルフォームで戦えるタイミングであること(ここが、本作の核となる)。この部分を把握したうえで、本作の内容を見ていこう。

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