西島秀俊演じる朝岡の意外な過去が明らかに 『おかえりモネ』が描く“自分本位”の意義

『おかえりモネ』朝岡の意外な過去

 『おかえりモネ』第59話は、前回の朝岡(西島秀俊)の衝撃的な「キャスター辞める」発言によるパニックから幕を開けた。

 スポーツ気象の部を作ろうとさえしていたのに、あれだけ世に気象情報の価値を広めるという大義を掲げたのに! そんなふうに彼の言葉の真意を探ろうとする莉子(今田美桜)と内田(清水尋也)と百音(清原果耶)。しかし、この大義を成し遂げようとするための動機が、百音の価値観を再び揺らがせる。

 今週、百音は結構ショックを受けることが多かったように思う。きっかけは、莉子がなんの気なしに言ってしまった「永浦さんって、重いよね」発言。「てか、人の役に立ちたいとかって、結局自分のためなんじゃん?」とまで言われてしまって、ようやく誰かのために役に立てた実感を噛み締める暇もなく、百音は動揺してしまう。

 莉子は、おそらく百音の周りにいる人間の中で最もわかりやすく個人の意識で動くタイプだ。莉子は、“利己”を体現するキャラなのである。だから、朝岡がキャスターを辞めるという発言も、百音や内田とは違い自分にとっての好機と捉えた。テレビ局員の高村(高岡早紀)に朝岡のことを聞きに行ったときも、次のキャスター候補が自分であるという確信が欲しくて話を聞き出していたのだから。しかし、そんな野心家の莉子の考えや行動は、自分という一つのブレない軸を持っているので、見ていて清々しいものがある。

 「あなたのおかげで」の週タイトルでは、この莉子にはじまり様々な人間のエゴが映し出されてきた。時には百音の母も「子供に自分の道を歩めって言ったのも、お母さんのエゴだったかなあ」と自分の過去の発言について考えたり、「ただ私が勝ちたいから」という自分の勝利しか目標に掲げていない車椅子のマラソン選手・鮫島(菅原小春)が登場したり。

 百音の表情は常に読みづらいものではあるが、彼女はこれまでずっと「自分がそこにいなかった」呪縛を背負ってきていた。それは、言い換えればその時、自分の好きなこと(音楽)を他人より優先した結果の出来事であり、それから何かと「自分のために好きなことはしちゃいけない」と音楽を辞めたり、誰かのために役立たねばと奮闘したり頑張り続けてきたようにも感じる。それが自分の償いに近い善行だと思っていたから。しかし、菅波(坂口健太郎)に言われた「あなたのおかげで助かりました、っていうあの言葉は麻薬」という台詞に引っかかり始める。

 なぜ麻薬なのか、それはその言葉を言われ続けることで「自分のおかげでこの人はこうなれた」「自分がこうしてあげたのに何故感謝されない」と、徐々に良くない形で自分のエゴが膨らみ、人助けの意味合いがすり替わっていくからではないだろうか。“コントロールフリーク”と呼ばれる人は、この手の考えに陥っていることが多いように思う。結局のところ、他人のためは自分のため、なのだ。それなら最初から自分のためという動機で動くほうが純粋で、人に理解されやすくて影響も与えやすいのだ。このテーマが、朝岡と高村の「マスメディアとパーソナルメディア」の話に重なってくる。

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