『閃光のハサウェイ』なぜここまで大ヒット? 徹底されたリアリズムと複雑な人間模様

 現在、全国215館の劇場で公開中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021年)が大ヒットしている。6月11日の公開日から3日間で興行収入5億円強、観客動員25万人以上を記録。公開2週目の6月20日時点で興行収入10億円を突破。ガンダムシリーズとしては、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』以来33年ぶりの興行収入10億越えとなった。また、上映館で限定販売されているBlu-rayは、6月17日までの販売数が5万枚を超えたという。なぜこれほどの大きな反響があったのだろうか。あまりガンダムを熱心に追っているわけではないアニメファン、映画ファンに向けて、『閃光のハサウェイ』がどんな立ち位置の作品かをおおまかに説いてみたい。

 数多くあるアニメ作品としてのガンダムは、大きく分けて「宇宙世紀もの」のシリーズと「それ以外」のシリーズの2種類がある。1979年に放送されたテレビアニメ『機動戦士ガンダム』で、地球連邦軍とジオン軍とが1年にわたって戦争を繰り広げたのが宇宙世紀0079年~0080年と設定されている。この1年戦争を起点として、その前史あるいは1年戦争後の世界を描く続編やスピンオフ作品は、この「宇宙世紀もの」の枠内に入るガンダム作品である。一方で、作中の時代設定が宇宙世紀ではなく、連邦軍、ジオン軍が存在した世界とは違う舞台で紡がれる物語は、非・宇宙世紀もののアナザーガンダムとされる。

 1年戦争では地球連邦軍のアムロ・レイと、ジオン軍のシャア・アズナブルという2大キャラクターが物語の軸となり、その後の宇宙世紀もののガンダムシリーズでは大なり小なり、この2人の戦いの痕跡が作中に反映されていることが多い。また、アムロ、シャアそれぞれの陣営の関係者、血縁者が後々のシリーズに登場するのも宇宙世紀ものの特徴といえる。

 公開中の『閃光のハサウェイ』は、ジオン軍との戦争時に宇宙戦艦ホワイトベースを指揮したブライト・ノア艦長の息子、ハサウェイ・ノアが主人公を務める宇宙世紀0105年の物語。1988年公開の劇場用アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の戦争から12年後という設定なので、『閃光のハサウェイ』鑑賞にあたっては、地続きの作品となる『逆襲のシャア』の予備知識が少々必要になるかも知れない。

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