『ドラゴン桜』第2シリーズでの大きな変化 いつの時代も求められるのは“熱い説教”?

説教垂れるドラマはいつの時代にも響く?

 『ドラゴン桜』の説教が増えた理由として、第2シリーズからメイン監督に就任した福澤克雄の影響が考えられる。第2シリーズの重厚な演出やシリアスな展開は、福澤が監督したTBS日曜劇場の大ヒット作『半沢直樹』風と言われているが、その『半沢直樹』でも堺雅人演じる半沢が要所で説教を炸裂させていた。

 圧巻だったのは第2シリーズのラスト。卑劣で老獪な与党幹事長・箕部(柄本明)さえ逃げ出した半沢のド迫力の説教は、視聴者の感動と涙を呼んだ。福澤は「あの最終回のセリフは、僕だけでなく、出演者、スタッフみんなの思いが結集して生まれたもの。コロナ禍でなければ、あのセリフはなかったでしょうね」と振り返っている(『GQ JAPAN』コンデナスト・ジャパン、2月7日)。つまり、時代が説教を求めていたのだ。

 なお、福澤は『半沢直樹』シーズン1の脚本について「若い将来確実に超一流になる二流脚本家二人と私と、三人で書きました」「とにかく自分主導でやりたかった」と打ち明けている(「慶応教育と半沢直樹」2014)。シーズン2のラストの説教も、このように福澤主導で生み出されたのだろう。

 画監督志望でTBSに入社した福澤克雄が、ほとんど唯一観ていたドラマが『3年B組金八先生』だった。第5シリーズでチーフディレクターに就任した福澤は、武田鉄矢と二人三脚で、それまでのリアルタッチな作品から、より社会問題を強く反映させた激しいドラマへと『金八先生』を作り変えていく。

 第5シリーズは、表向きは優等生だが裏でクラスを支配して冷徹にイジメを行い、教師への暴力まで扇動する兼末健次郎(風間俊介)が中心のストーリーだったが、金八は何度も兼末とクラスメイトに涙ながらの説教を行い、兼末の両親にも激しい説教をして見事に改心させた。福澤は『金八先生』に携わっていたときのことを、「台本を勝手に変えて(脚本の小山内美江子に)怒られもしましたが、すごい視聴率を獲ることができました」と振り返っている(前同)。

 『金八先生』では長きにわたって、次々と若者たちの間で顕在化するさまざまな問題を取り扱ってきた。その中で金八は生徒に寄り添いながら熱い説教で問題を解決しようとしてきた。『ドラゴン桜』第2シリーズが放映されている今、国と権力者による搾取のシステムは第1シリーズの頃と比べても堅牢になり、学ぼうとする女性を抑圧する男たちの存在も可視化され、若者たちは閉塞感を打開する方法がわからず、無気力で、自己肯定感が低く、平気で他人を傷つけてばかりいる。そんな中で、桜木は若者たちに閉塞感を突破する東大合格への道を指し示すだけでなく、説教も行っていく。

 今、人々はよりストレートに響く、熱い説教を求めるようになっているのかもしれない。最終回に向けて、桜木建二はどんな説教を繰り広げるのだろうか。

■大山くまお
ライター・編集。名言、映画、ドラマ、アニメ、音楽などについて取材・執筆を行う。近著に『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』(共著)。文春オンラインにて名言記事を連載中。Twitter

■放送情報
日曜劇場『ドラゴン桜』
TBS系にて、毎週日曜21:00~放送
出演:阿部寛、長澤まさみ、高橋海人(King & Prince)、南沙良、平手友梨奈、加藤清史郎、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央太、西山潤、西垣匠、吉田美月喜、内村遥、山田キヌヲ、ケン(水玉れっぷう隊)、鶴ヶ崎好昭、駿河太郎、馬渕英里何、大幡しえり、深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.)、林遣都、佐野勇斗、早霧せいな、山崎銀之丞、木場勝己、江口のりこ、及川光博ほか
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(講談社刊)
プロデュース:飯田和孝、黎景怡
脚本:オークラ、李正美、山本奈奈
演出:福澤克雄ほか
製作著作:TBS
(c)TBS

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