『おちょやん』の“喜劇”に救われた半年間 秦基博「泣き笑いのエピソード」が改めて沁みる

『おちょやん』の“喜劇”に救われた半年間 秦基博「泣き笑いのエピソード」が改めて沁みる

 NHK連続テレビ小説『おちょやん』がついに最終回を迎える。大阪・南河内の貧しい家庭に生まれ、口減らしのためにわずか9歳で奉公に出された竹井千代(杉咲花)が“大阪のお母さん”と親しまれる大女優に成長するまでの生涯を描いた本作。

 働きもせず酒と博打にのめり込み、借金を重ねる父・テルヲ(トータス松本)に振り回され、境遇が似ている良き理解者の一平(成田凌)と結婚してようやく幸せになれると思ったら不倫という形で裏切られ、ふたたび居場所を失った千代。その人生はあまりにも波乱万丈で、時には観ているのが辛くなる時もあった。それでも、観続けた先に『おちょやん』がプレゼントしてくれたのは、笑って、泣けて、人情あふれる喜劇。秦基博が歌う主題歌「泣き笑いのエピソード」の歌詞にもあるように、“かさぶた”へと変わった古傷を私たちに惜しみなく見せてくれたのだ。

 最後はまだ消えていない千代のかさぶた、一平との再会と鶴亀新喜劇への復帰が描かれるのだろう。NHKラジオドラマの人気女優として大成し、ようやく傷が癒えかけていた千代の心を揺さぶったのは、5月10日の放送回で一平が喜劇について語った本質的な言葉だった。

「私は喜劇なんかなくなる世界を作るために、喜劇をやってるのかもわかりませんな」

 父から天海天海という名と想いを受け継ぎ、その生涯、喜劇にこだわり続けた一平。彼を劇作家として成功させたのも喜劇だったが、芝居に人生を捧げていた父に愛想を尽かし、母親が出て行ったことや、執筆に行き詰まり救いを求めて劇団員と不倫したことで、公私ともに良きパートナーだった千代を失ったことを鑑みても、その身を滅ぼしたのも喜劇だったといえる。それでも喜劇をやる理由が、以前一平が千代に語った台詞と重なった。

「お前の苦しみはお前にしか分かれへん。俺の苦しみは、お前なんかには絶対に分かれへん。そやから俺は芝居すんねん。芝居してたら、そういうもんがちょっとは分かる気がする。分かってもらえる気がする」

 この言葉で、夢を諦めかけていた千代は思いとどまる。父からずっと血の繋がった娘としての役割を押し付けられてきた千代だって、初めて観た舞台『人形の家』で自身をお飾り人形として扱う夫から自立を目指したヒロイン・ノラを演じる女優・高城百合子に憧れて女優を目指したのだから。

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