『着飾る恋』にみる根底的な人と人との付き合い方 川口春奈演じる真柴らにも変化が

『着飾る恋』根底的な人との付き合い方を活写

 人生には、思ってもみなかった危機が起こる。みんな、少しでもうまくいくように日々選択をしているはずなのに。それぞれが精いっぱい生きているはずなのに。それでも「まさか」の事態が起こってしまう。

 それは、できれば経験したくはなかったこと。けれど、そんなときこそ「放っておけない」「元気づけたい」と言ってくれる人たちがいてくれることに、気づくことができる貴重なタイミングでもある。

 同じように心を痛めてうろたえてくれる人。自分にできることをと心を込めた料理を作ってくれる人。人生の先輩として「強くなれ」と抱きしめてくれる人。どこまでも一緒にそのピンチを寄り添う覚悟の涙を流してくれる人……。順調な日々には気づけなかった人の優しさに触れられるのは、そんな危機のときだったりするのだ。

 『着飾る恋には理由があって』(TBS系)というドラマは、表向きはライトな胸キュンラブコメ。だが、登場人物たちが直面する現実はずっとシビアだ。ヒロインの真柴(川口春奈)は、初回から何年もかけて積み上げてきた努力と想いが、片想いの相手・葉山(向井理)の突然の失踪と共に崩れてしまった。

 駿(横浜流星)も、自分の店を手放したという過去を持ち、50歳を機に再びときめきを取り戻そうと一念発起して海外留学の準備を進めてきた香子(夏川結衣)も、結果として詐欺にあって計画は全てキャンセルを余儀なくされてしまった。

 そして、アーティストの卵である羽瀬(中村アン)は、オンラインカウンセラーの陽人(丸山隆平)との心地よい空気を感じ、再び夢に向かって歩き始めた矢先に、妊娠しているかもしれないという現実を突きつけられる。

 相手はバイト先の同僚で「付き合ってはいない」と前回、話をしていたばかり。そして、相談をしようとしたまさにそのとき、幼なじみと結婚をして勤務先も異動してしまうことが判明してしまう残酷な展開が待っている。

 想い人がいなくなっても、店がなくなっても、留学がキャンセルになっても、思いもよらぬ形で夢を諦めなくてはならなくなっても……私たちは「生きる」を続けていかなければならない。そんな1人で抱えるにはあまりにも大きな困難を、このシェアハウスのメンバーは「ファイブオペ」で乗り越えようと言ってくれる。

 もちろん「無責任なこと言わないで」という声も上がらないわけではない。でも、その気持ちが嬉しいではないか。「自己責任」という言葉が浸透して久しいが、そこに輪をかけてこのコロナ禍が降り掛かった。人に迷惑をかけないように、1人でなんとかしようと頑張るようになった一方で、誰かの困難を共に乗り越えようという余裕を持つ人が減ってしまってはいないだろうか。そして「力になりたい」と差し伸べてくれた手に、引け目を感じすぎてしまってはいないだろうか。

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