中村倫也と磯村勇斗がぶつかり合う 『珈琲いかがでしょう』“赤”と“黒”の対比

中村倫也と磯村勇斗がぶつかり合う 『珈琲いかがでしょう』“赤”と“黒”の対比

ぺいの中にある「赤」と「黒」

 ドラマオリジナルの「初恋珈琲」を描くことによって、ぺいという人となりがより浮き彫りになっていった。青山を逃がすために自らの血を流すことにしたぺい。意識が朦朧とする中、その真っ赤な血を眺めながら初恋の「あの子」のランドセルを思い出すのだ。

 「赤」は、ぺいにとって小さな愛を感じた象徴の色なのかもしれない。「あの子」の家に呼ばれて、一緒に食べた手作りの珈琲ゼリー。その上に乗っていた真っ赤なさくらんぼは、「あの子」が愛情をたっぷり受けて育ってきた証だ。親に殴られて育った自分には、やっぱり珈琲ゼリーのおいしさはわからない。憧れて少しでも近づきたくて、でも近づくほどに自分との生まれの違いを見せつけられて。恋をした喜びと叶わない想いの寂しさを行き来した初恋。

 それが決定的になったのが、時を経て再会したときだった。ブラック珈琲を「美味しい」といって飲む「あの子」と、大人になってもそのうまさがわからないぺい。すでに裏社会に足を踏み入れていたぺいにとって、その時間は純粋に初恋が実らなかったという事実よりも、育ちの悪さが生んだ分岐の大きさ、その残酷さを実感させるものだったのだろう。

 そんな物悲しいぺいの顔を見逃さなかったのは、青山だった。そして「寂しさが紛れる」と言って差し出したのは、赤いイチゴのイラストが施されたイチゴミルクだ。ぺいがこれまで青山を追いながら飴をなめるシーンを思い出す。青山が去り、憎しみや怒りよりも、寂しさが彼を包んでいたという切なさと同時に。

 自分と同じところで沈んでいくはずだった青山を連れて行ってしまった真っ黒な珈琲。青山の金髪は、いつの間にか黒髪となり、自分とはもう随分遠く離れた生活を送っているのがわかる。そして、最もぺいにとって屈辱的だったのは、その青山の淹れた珈琲によって自分以外の人たちが「救われている」という事実だったのではないか。

 冷たい世の中で数少ない愛を感じられた「赤」と、何度も絶望しながらそれでも“救われたい”と渇望してきた「黒」。ぺいの中にある印象的な2色は、どこか鮮血とどす黒く固まるかさぶたにもかさなる。もしかしたら、青山をかばうために自ら足を刺して流したぺいの赤い血は、ぺいができる最大限の愛情表現だったのかもしれない。そうして青山の危機を助けることで、初めて「救われた」感覚を得られたのではないか。

 誰かにきっかけをもらい、何かにハマることだけが「救われる」タイミングではない。きっと青山も、美味しい珈琲と出会ったからではなく、そのあと多くの人にそれを提供したからこそ「人生が変わった」「救われた」と思えているように。「自分が誰かの役に立った」という喜びこそが生きがいであり、人生の醍醐味なのだろう。

■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗、光石研ほか
第4話~:渡辺大
第6話~:宮世琉弥、鶴見辰吾
第7話~:長野蒼大
第8話ゲスト:市毛良枝、宮野陽名、前田旺志郎、森迫永依
原作:コナリミサト『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン刊)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
音楽:HAKASE-SUN
オープニングテーマ:「エル・フエゴ(ザ・炎)」小沢健二(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)
エンディングテーマ:「CHAIN」Nulbarich(ビクターエンタテインメント)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga

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