『きれいのくに』第2話まではまさかの“啓発映画” 何人もの稲垣吾郎を見る全く新しい体験に

『きれいのくに』明らかになった世界

 これまで第1話では恵理(吉田羊)が10年前の恵理(蓮佛美沙子)に若返り、第2話ではそこに23才の恵理(小野花梨)を加えた「3人1役」について触れてきたが、それらはほんの序章に過ぎなかった。

 よるドラ『きれいのくに』(NHK総合)第3話では、第1話と第2話で描かれてきた世界が監督・山内(稲垣吾郎)による啓発映画であったことが明らかになる。

 高校生たちが暮らすのは、ほとんどの大人、その子供たちが同じ顔をした不条理な国。20代から50代までの男女約8割、およそ4900万人が美容手術経験者となり、直接手術、遺伝子の編集によって子供を同じ顔にし、街ゆく人たちがほぼ同じ顔になってしまった。その結果、同じ顔による犯罪、遺伝子の編集がエスカレートして健康を害したといった背景から、美容手術が10年前から禁止に。「トレンド、美容手術、遺伝子編集」のストップが、そこかしこで叫ばれているのだ。

 この世界では同じ顔であることがマジョリティであり、顔が違う人がマイノリティにある。その同じ顔のモデルになっているのが、男性は稲垣吾郎、女性が加藤ローサ。本作では日本のドラマでは初めてAI(人工知能)による顔合成が使用されており、街中を歩く人々や生徒の一人である中山(秋元龍太朗)が遺伝子編集によって生まれた世代として顔合成が施されている。けれど、映画の監督や生徒たちの担任、誠也(青木柚)の父親、れいら(岡本夏美)とのパパ活相手の福井など、稲垣自身が演じていると思われる役柄も多くあり、「これは、稲垣吾郎本人……?」(加藤ローサも然り)と途中から初めての見方をし始めている自分に気づいた。全く新しい体験である(途中でSMAPを想起させるアドトラックが全員稲垣の顔になっているのもユーモアたっぷりである)。

 この世界では高校生たちの価値観も大きく変容している。誠也と凜(見上愛)の家は隣同士。窓伝いに誠也は「俺らより大人の人ってみんな何で選んで結婚したんだろう?」と問いかけ、凜は「う~ん。何だろうね。みんな同じに見えるからね。まぁ、見た目では好きになってないよね」と答えている。凜のような外見にコンプレックスをもったマイノリティ側の抜け道として横行しているのが裏整形。高校生でも簡単に同じ顔になれる魔の手がすぐそばまで染まっていることを受けての冒頭の啓発映画なのだ。

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